二刀流トレーナーの海外医科学図書館

二刀流【メディカル(診断・治療・リハビリ)とストレングス(トレーニング・栄養)】に渡るジェネラリストへ

筋トレ後のストレッチは本当に有効? そもそも正しい順番なんてあるの?

f:id:dogknt:20200621221905j:plain

筋トレ前にストレッチは行わない方が良い。これは結構広まってきており、現在ではあまり行われなくなってきました。それと同時にストレッチは筋トレ後に行うべきという情報が広まりつつあります。果たして筋トレ後であれば本当に効果があるのでしょうか?最新のエビデンスを元に調べてみました。

 

 

  1. ストレッチによって筋の粘性が低下し可動域は改善する
  2. 筋トレ前のストレッチはデメリットが多くやらない方が良いのは明白
  3. 筋トレ後は大きなメリットもデメリットもなく、正しい順番は不明
  4. ストレッチ自体には効果はあるが、筋トレに対するメリットは薄い(別で考えるべき)
  5. 可動域改善であれば筋トレだけでも同等の効果を得られる

 

ストレッチの方法と効果

ストレッチの効果の一つとして可動域の向上が挙げられます。これについては異論の余地はないと思います。静的ストレッチによる筋の柔軟性の向上ですが、ストレッチを30秒まで行うと効果が高まり、それ以上長く行っても効果の向上はみられないので*1、長くやり過ぎる必要はありません。筋節の増加による可動域の変化は長期的に変化するものであって、その場で向上するものは筋緊張の変化などが要因となっている可能性が高いです。少なくとも結合組織などの変性などが起きている可能性は低いです*2。少し生理学的な話をすると、ストレッチをすることで筋の粘性が低下することで伸長性が向上します*3

 

 

ストレッチのデメリット

反対にストレッチによるデメリットとしてストレッチ単独では筋出力が低下することは様々な研究で明らかにされていますが、ウォーミングアップと組み合わせることでストレッチによる悪影響が軽減できるという報告*4もあり、どうしてもストレッチを行いたい人がいたら組み合わせるのも方法の1つかもしれません。

ストレッチの影響は筋出力の低下だけでしょうか?実は、今まではストレッチのメリットとして信じられていたものが徐々に覆されつつあります。例えば、筋肉痛を和らげる作用を保つとされていましたが、筋トレ前中後どのタイミングで行ってもそのような効果は薄そうです*5*6。また2014年のシステマティックレビューではストレッチによる怪我予防の効果はないと報告されています*7。筋トレ後に行った方が血流の循環がよくなり疲労が蓄積しにくくなるとも言われてましたが、最近では循環をよくするどころか、悪くするとも言われています*8

f:id:dogknt:20200622201517j:plain

 

 

ストレッチは無駄なのか

それではストレッチは全く行う必要のないものなのでしょうか?そうとも言えないというのが正直なところです。なぜなら、上記で説明したような効果(メリット)はみられるからです。重要なのはどうやって取り入れるかだと思います。筋トレに対するプラスの影響が少ないので、可動域改善を狙っているが筋トレもしてパフォーマンスも上げていきたいとするならば筋トレとは時間を空けて行う方が良いでしょう。ただし、筋トレ前は少しでも筋をストレッチしないと不安という方もいると思います。もし筋トレ前などに行いたい場合、ストレッチの種類としても、静的ストレッチをするよりもバリスティックストレッチを行う方が筋トルクの低下を招かないこと*9から、ストレッチの種類に注意する必要があります。ただし、スポーツ選手に関していうと、筋トレと静的ストレッチの柔軟性の向上に差はなく*10、筋力の向上はもちろん筋トレの方が効果は高いのでスポーツ選手に対しては積極的に行うメリットは低いと言えるでしょう。これらをまとめると、筋トレを行わない人で柔軟性を向上させたい人は行う必要がありそうですが、筋トレを行う習慣のあるスポーツ選手であれば積極的にストレッチを行う必要はなさそうです。

 

 

ストレッチの正しい順番

結局ストレッチのただし順番は存在するのでしょうか?上記のように、ストレッチによって筋出力が低下するので、筋トレの前はやめた方が良いのは確かでしょう。それでは筋トレの後はどうでしょうか?今の所筋トレ後に行って悪影響を及ぼしたという論文は見当たらないので、行っても良いですが、前述したように筋トレに対するメリットもさほどないので、あとは個人の好みによるとしか言えないです。つまり、ストレッチ自体に効果はありますが、筋トレに対してはデメリットがあるので筋トレ前は控え、筋トレ後は不明瞭なことが多いので正しい順番は明言できないというのが現状です。

 

 

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

 

 

参考文献

*1:Bandy, W. D., & Irion, J. M. (1994). The effect of time on static stretch on the flexibility of the hamstring muscles. Physical therapy, 74(9), 845–852. https://doi.org/10.1093/ptj/74.9.845

*2:Morse, C. I., Degens, H., Seynnes, O. R., Maganaris, C. N., & Jones, D. A. (2008). The acute effect of stretching on the passive stiffness of the human gastrocnemius muscle tendon unit. The Journal of physiology, 586(1), 97–106. https://doi.org/10.1113/jphysiol.2007.140434

*3:Kubo, K., Kanehisa, H., Kawakami, Y., & Fukunaga, T. (2001). Influence of static stretching on viscoelastic properties of human tendon structures in vivo. Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985), 90(2), 520–527. https://doi.org/10.1152/jappl.2001.90.2.520

*4:McHugh, M. P., & Cosgrave, C. H. (2010). To stretch or not to stretch: the role of stretching in injury prevention and performance. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 20(2), 169–181. https://doi.org/10.1111/j.1600-0838.2009.01058.x

*5:Herbert, R. D., & Gabriel, M. (2002). Effects of stretching before and after exercising on muscle soreness and risk of injury: systematic review. BMJ (Clinical research ed.), 325(7362), 468. https://doi.org/10.1136/bmj.325.7362.468

*6:Herbert, R. D., & de Noronha, M. (2007). Stretching to prevent or reduce muscle soreness after exercise. The Cochrane database of systematic reviews, (4), CD004577. https://doi.org/10.1002/14651858.CD004577.pub2

*7:Lewis J. (2014). A systematic literature review of the relationship between stretching and athletic injury prevention. Orthopedic nursing, 33(6), 312–322. https://doi.org/10.1097/NOR.0000000000000097

*8:Mika, A., Mika, P., Fernhall, B., & Unnithan, V. B. (2007). Comparison of recovery strategies on muscle performance after fatiguing exercise. American journal of physical medicine & rehabilitation, 86(6), 474–481. https://doi.org/10.1097/PHM.0b013e31805b7c79

*9:Mahieu, N. N., McNair, P., De Muynck, M., Stevens, V., Blanckaert, I., Smits, N., & Witvrouw, E. (2007). Effect of static and ballistic stretching on the muscle-tendon tissue properties. Medicine and science in sports and exercise, 39(3), 494–501. https://doi.org/10.1249/01.mss.0000247004.40212.f7

*10:Morton, S. K., Whitehead, J. R., Brinkert, R. H., & Caine, D. J. (2011). Resistance training vs. static stretching: effects on flexibility and strength. Journal of strength and conditioning research, 25(12), 3391–3398. https://doi.org/10.1519/JSC.0b013e31821624aa