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エビデンスに基づくSLAP損傷のためのスペシャルテスト

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野球をはじめとするオーバーヘッドスポーツをやっている方に多い怪我の一つがこのSLAP損傷です。手術を時には必要とする怪我であり、トレーナーや柔道整復師理学療法士などはこの障害をしっかりと評価して行きたいですよね。そこで今回はSLAP損傷(スラップ損傷)を診断・評価するためのスペシャルテストをエビデンスの観点からお伝えできればと思います。

 

 

SLAP損傷とは

SLAPとはSeperior Labrum from Anterior to Posteriorの略で、関節唇の上腕二頭筋の停止部の部分を指します。 この部分が損傷してしまうことをSLAP損傷(スラップ損傷)と言います。SLAP損傷には大きく7段階に分類されます。

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SLAP損傷の分類

タイプⅠ:上腕二頭筋腱付着部である関節唇の剥離がなく、関節唇の変性

タイプⅡ:関節唇の剥離が見られる

タイプⅢ:関節唇がバケツ状に損傷し関節内に転移しているが、上腕二頭筋腱付着部は残っている

タイプⅣ:タイプⅢの状態に加え、上腕二頭筋腱の損傷を伴う

さらにタイプⅡは以下の3種類に細かく分かれます。

タイプⅤ:バンカート損傷(タイプⅡに移行する可能性のあるもの)

タイプⅥ:上腕二頭筋の分離を伴う関節唇損傷

タイプⅦ:上腕二頭筋が前方に分離し、GHLの下部にきてしまう 

 

SLAP損傷の主な要因としては、繰り返しの投球、肩関節の過伸展、外傷、重いものを持ち上げる時などが挙げられます。受傷するする年齢は30歳を越えるとリスクが上がると言われています*1。また症状としては、動作時のクリック音、肩関節内旋のROM制限、肩関節挙上時の疼痛、腱板機能の低下、肩甲骨の安定性低下、患側を下にして寝られないなどが挙げられます。

このSLAP損傷を診断するためのスペシャルテストですが、そもそもSLAP損傷の特徴的な臨床所見として間欠的な疼痛があります。そのため、1つのテストで確定することなく、複数のテストを併用して診断の確率を挙げていくことが良いとされています。

 

スペシャルテスト

Yergason's Test(ヤーガソンテスト )

上腕二頭筋腱に負荷をかけて評価するスペシャルテストです。スピードテストも同様に上腕二頭筋腱に負荷を掛けていくテストになります。

詳細はこちら

dog.training-univ.com

 

Biceps Load Ⅱ Test(上腕二頭筋負荷テストⅡ)

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オランダでは最も使われているテストです。

感度:89.7%

特異度:96.6%*2

方法:背臥位にて患側の肩関節120°外転・最大外旋位、同側の肘関節90°屈曲位をとる。その位置から肘関節を自動にて屈曲してもらう。セラピストはそれに対抗するように肘関節伸展方向に抵抗を掛けます。疼痛が誘発されたら陽性

 

O'Brien Test/Active Compression Test(オブラインテスト/自動圧迫テスト)

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感度:28-73%

特異度:63-94%*3*4

方法:患者は座位で、患側の肩関節を90°屈曲・10-15°水平内転・最大内旋、同側の前腕最大回内位の姿勢をとる。そこからセラピストが上から垂直方向に抵抗を掛ける。これを肩関節最大外旋、前腕最大回外位でも行う。前者で疼痛があり、後者でなかったら陽性。

 

 

Dynamic Labral Shear Test

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感度:78%

特異度:51%*5

方法:座位または立位にて行う。他動にてセラピストは患側の肩関節を90°肩甲骨面上に外転させ、一側の手で同側の手関節または肘関節を把持する。もう片方の手で骨頭を前方に負荷を掛けながら、他動にて150°外転まで持っていく。疼痛が誘発したら陽性。

 

Passive Distraction Test

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感度:53%

特異度:94%*6

方法:背臥位にてセラピストが患側の肩関節150°外転・最大外旋、前腕最大回外位をとる。そこから上腕を固定し、他動にて前腕のみを回内する。この時に疼痛が出れば陽性。

 

Passive Compression Test(他動圧迫テスト)

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感度:82%

特異度:86%*7

方法:患者は側臥位にてセラピストは他動にて患側の肩関節を30°伸展・最大外旋位の姿勢をとる。一側の手で同側の肘関節を把持し、肘を押すことで頭側方向に負荷を掛ける。この時疼痛が出たら陽性。 

 

Compression Rotation Test(圧迫回旋テスト)

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感度:43%

特異度:89%*8

方法:患者は背臥位にて行う。セラピストは他動にて患側の肩関節を90°外転させ、上腕骨頭に圧を加えながら肩関節を内外旋させる。

 

 

除外診断のためのテストの組み合わせ(クラスターテスト)

 数多くあるSLAP損傷のスペシャルテストですが、どのテストを用いたらわからない方も多いと思います。そこでクラスターテストというスペシャルテストの組み合わせることで診断の確率を上げるセットをお伝えします。 

クラスターテスト

O'Brien Test/Active Compression Test

Passive Distraction Test

このテストを組み合わせることで尤度比が以下のようになります。

LR+:7.0

LR−:0.33 

尤度比に関してはこちら 

dog.training-univ.com

 

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

 

 

参考文献

*1:Koziak, A., Chuang, M. J., Jancosko, J. J., Burnett, K. R., & Nottage, W. M. (2014). Magnetic resonance arthrography assessment of the superior labrum using the BLC system: age-related changes mimicking SLAP-2 lesions. Skeletal radiology43(8), 1065–1070. https://doi.org/10.1007/s00256-014-1889-3

*2:Kim, S. H., Ha, K. I., Ahn, J. H., Kim, S. H., & Choi, H. J. (2001). Biceps load test II: A clinical test for SLAP lesions of the shoulder. Arthroscopy : the journal of arthroscopic & related surgery : official publication of the Arthroscopy Association of North America and the International Arthroscopy Association17(2), 160–164. https://doi.org/10.1053/jars.2001.20665

*3:Ebinger, N., Magosch, P., Lichtenberg, S., & Habermeyer, P. (2008). A new SLAP test: the supine flexion resistance test. Arthroscopy : the journal of arthroscopic & related surgery : official publication of the Arthroscopy Association of North America and the International Arthroscopy Association24(5), 500–505. https://doi.org/10.1016/j.arthro.2007.11.017

*4:Guanche, C. A., & Jones, D. C. (2003). Clinical testing for tears of the glenoid labrum. Arthroscopy : the journal of arthroscopic & related surgery : official publication of the Arthroscopy Association of North America and the International Arthroscopy Association19(5), 517–523. https://doi.org/10.1053/jars.2003.50104

*5:Sodha, S., Srikumaran, U., Choi, K., Borade, A. U., & McFarland, E. G. (2017). Clinical Assessment of the Dynamic Labral Shear Test for Superior Labrum Anterior and Posterior Lesions. The American journal of sports medicine45(4), 775–781. https://doi.org/10.1177/0363546517690349

*6:Schlechter, J. A., Summa, S., & Rubin, B. D. (2009). The passive distraction test: a new diagnostic aid for clinically significant superior labral pathology. Arthroscopy : the journal of arthroscopic & related surgery : official publication of the Arthroscopy Association of North America and the International Arthroscopy Association25(12), 1374–1379. https://doi.org/10.1016/j.arthro.2009.04.070

*7:Kim, Y. S., Kim, J. M., Ha, K. Y., Choy, S., Joo, M. W., & Chung, Y. G. (2007). The passive compression test: a new clinical test for superior labral tears of the shoulder. The American journal of sports medicine35(9), 1489–1494. https://doi.org/10.1177/0363546507301884

*8:Gismervik, S. Ø., Drogset, J. O., Granviken, F., Rø, M., & Leivseth, G. (2017). Physical examination tests of the shoulder: a systematic review and meta-analysis of diagnostic test performance. BMC musculoskeletal disorders18(1), 41. https://doi.org/10.1186/s12891-017-1400-0