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肩関節のスペシャルテスト集

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肩関節と一言で言っても、肩甲上腕関節なのか、肩鎖関節なのか、どの部位が損傷しているのかなど評価すべきことが多く、苦手な人もいるのではないでしょうか。今回はオランダ理学療法ガイドラインに沿って、どのように評価していくのかといった視点からスペシャルテストをご紹介させていただければと思います。

 

 

肩関節障害の分類

オランダの理学療法ガイドラインでは肩関節の疾患は3種類に分類されます。ここには胸郭出口症候群や頚椎の神経障害などは含まれていません。この分類はリハビリプログラムに合わせて分類されています。

 

SAPS(Subacromial Pain Syndrome) 肩峰下疼痛症候群

まず1つ目はSAPSです。文字通り肩峰下に疼痛がある疾患のことで、肩峰下インピンジメント症候群などが代表例になります。現在オランダでは、肩峰下インピンジメント症候群という言葉は使わずSAPSで統一されています。というのも肩峰下滑液包がインピンジメントするとは限らず、様々な組織が影響し複雑なことが多いからです。腱板損傷、SLAP損傷、腱板の筋炎、肩峰下滑液包炎などがSAPSに含まれます。SAPSの70%はTendinopathy腱障害であり、重症度にもよりますが、ガイドラインとしては基本的に運動療法が推奨されています。

 

肩甲上腕関節障害

これも文字通り肩甲上腕関節に問題がある場合はこちらに分類されます。疾患で言うと、フローズンショルダー、肩関節周囲炎、リウマチなどが挙げられます。基本的にSAPSの症状がなく、肩甲上腕関節で可動域制限が見られた場合はこれに当てはまります。

 

その他

上記の2つでなかった場合、つまり、症状が肩甲上腕関節でも肩峰下の部分でもなかった場合になります。例えば、肩鎖関節や胸鎖関節、そして骨頭の不安定性(これだけ例外です)はこちらになります。

 

個人的にはSAPSであれば運動療法中心に、肩甲上腕関節の問題であればモビライゼーションを中心にという感じで大まかなリハビリプログラムが別れるイメージです

 

SAPS

上記でも説明したように、SAPSは要因が複雑でピンポイントでここが要因!というようなことは少ないので、そもそも要因をピンポイントで特定すること自体がナンセンスであると言えます。なので、SAPSのスペシャルテストは以下のように存在しますが、結局は総合的に判断していくことが多いのが現状です。なので、細かいテストをご紹介するというよりは、クラスターテストをご紹介します。

 

①Hawkins-Kennedy Test(ホーキンスケネディテスト)

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目的:SAPSの有無を評価する

患者の開始姿勢:座位

セラピストの開始姿勢:検惻に位置する

セラピストの手:片側の手で検側の肘関節を把持し、もう一方の手で手関節を把持する

動作:他動にて検側の肩関節を90°屈曲・内旋させる

陽性:肩関節に疼痛が生じたら陽性

Note:

 

②Painful Arc Test(疼痛テスト)

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目的:SAPSの有無を評価する

患者の開始姿勢:立位

セラピストの開始姿勢:自動でのテストなので、特に指定なし

セラピストの手:同上

動作:患者は自動にて肩関節を最大外転する

陽性:外転している途中で、疼痛などの症状が生じるものの、ある角度を超えると消失すれば陽性

Note:

 

③Infraspinatus Test(棘下筋テスト)

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目的:SAPSの有無を評価する

患者の開始姿勢:立位または座位にて行う

セラピストの開始姿勢:検側に位置する

セラピストの手:片側の手で検側の肘関節を把持し、もう一方の手で手関節を把持する

動作:検側の肩関節1stポジションをとり、セラピストは内旋方向に抵抗を掛け、患者はその力に抵抗する

陽性:肩関節に疼痛が生じたら陽性

Note:

LR+:10.56(3つ全て陽性)

LR-:0.17(3つ全て陰性)*1

尤度比(LR+、LR-)に関してはこちら

dog.training-univ.com

 

ちなみにSLAP損傷のスペシャルテストはこちら

dog.training-univ.com

 

 

骨頭不安定性

Apprehension Test(不安定テスト)

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目的:肩甲上腕関節不安定性を評価する

患者の開始姿勢:背臥位にて行う

セラピストの開始姿勢:検側に位置する

セラピストの手:片側の手で肘関節を把持し、もう一側の手で手関節を把持する

動作:他動にて検側の肩関節を2ndポジションにて外旋させる

陽性:肩関節に疼痛や恐怖感が生じたら陽性

Note:

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:66%

Specificity 特異度:95%

 

Relocation Test(整復テスト)

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目的:肩甲上腕関節不安定性を評価する

患者の開始姿勢:背臥位にて行う

セラピストの開始姿勢:検側に位置する

セラピストの手:片側の手で検側の上腕骨頭を抑え、もう一側の手で肘関節を把持する

動作:他動にて検側の肩関節を2ndポジションにて外旋させる。この時骨頭は抑える。

陽性:Apprehension testで疼痛があり、このテストで疼痛がなければ陽性

Note:基本的にApprehenssion Testとセットで行う。

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:65%

Specificity 特異度:90%*2

 

肩鎖関節障害

Paxino's Sign(パキシーノ徴候)

目的:肩鎖関節障害の有無を評価する

患者の開始姿勢:座位または立位にて行う

セラピストの開始姿勢:検側に位置する

セラピストの手:両手で肩鎖関節を動かせるように把持する

動作:他動にて検側の肩鎖関節の関節面に沿って前後に動かす

陽性:疼痛が生じたら陽性

Note:肩鎖関節障害が起きるのは慢性的な障害によるものと特異的な外傷によるものですので、問診である程度評価していく方が良いです。

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:79%

Specificity 特異度:50%*3

 

Resisted AC joint Extension Test(抵抗下肩鎖関節伸展テスト)

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目的:肩鎖関節障害の有無を評価する

患者の開始姿勢:座位にて行う

セラピストの開始姿勢:検側に位置する

セラピストの手:片側の手で肩甲帯を抑え、もう一側の手で肘関節を抑える

動作:患者は検側の関節90°屈曲し、内旋位をとる。セラピストは肩関節水平屈曲方向に抵抗を掛け、患者はそれに抵抗する。

陽性:肩鎖関節付近に疼痛が生じたら陽性

Note:

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:72%

Specificity 特異度:85%*4

 

Cluster Test of Acromioclavicular(肩鎖関節のクラスターテスト)

以下の5つがクラスターテストの項目になります

・疼痛が反復する運動によって急に生じた

・肘より抹消に症状がない

・肩鎖関節に腫脹が見られる

・肩甲上腕関節を他動で外転させても疼痛がない

・肩甲上腕関節を他動にて90°外転・外旋させても疼痛がない

 

Sensitivity感度:96%(当てはまるのが2つ以下)

Specificity特異度:95%(当てはまるのが4つ以上)*5

肩鎖関節の障害なので、肩全体を動かすと疼痛があるのに、肩甲上腕関節に限局して動かすと疼痛がないのは肩鎖関節の可能性が高くなりますよね

 

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

 

他の部位のスペシャルテストはこちらです。ぜひご参照ください。

dog.training-univ.com

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参考文献

*1:Park, H. B., Yokota, A., Gill, H. S., El Rassi, G., & McFarland, E. G. (2005). Diagnostic accuracy of clinical tests for the different degrees of subacromial impingement syndrome. The Journal of bone and joint surgery. American volume, 87(7), 1446–1455. https://doi.org/10.2106/JBJS.D.02335

*2:Hegedus, E. J., Goode, A. P., Cook, C. E., Michener, L., Myer, C. A., Myer, D. M., & Wright, A. A. (2012). Which physical examination tests provide clinicians with the most value when examining the shoulder? Update of a systematic review with meta-analysis of individual tests. British journal of sports medicine, 46(14), 964–978. https://doi.org/10.1136/bjsports-2012-091066

*3:Walton, J., Mahajan, S., Paxinos, A., Marshall, J., Bryant, C., Shnier, R., Quinn, R., & Murrell, G. A. (2004). Diagnostic values of tests for acromioclavicular joint pain. The Journal of bone and joint surgery. American volume, 86(4), 807–812. https://doi.org/10.2106/00004623-200404000-00021

*4:Chronopoulos, E., Kim, T. K., Park, H. B., Ashenbrenner, D., & McFarland, E. G. (2004). Diagnostic value of physical tests for isolated chronic acromioclavicular lesions. The American journal of sports medicine, 32(3), 655–661. https://doi.org/10.1177/0363546503261723

*5:Cadogan, A., McNair, P., Laslett, M., & Hing, W. (2013). Shoulder pain in primary care: diagnostic accuracy of clinical examination tests for non-traumatic acromioclavicular joint pain. BMC musculoskeletal disorders, 14, 156. https://doi.org/10.1186/1471-2474-14-156