皆さんは感度と特異度を知っていますか?
スペシャルテスト(整形外科テスト)を行うときに必ずと言って良いほど出てきますよね!
でも感度と特異度を勘違いしている人が多いのも事実です。感度や特異度が高いということはどういうことでしょうか?そこで今回は感度と特異度についてお伝えできればと思います。
感度・特異度とは?
感度と特異度は統計学でよく用いられる統計的尺度のことであり、医学などによく用いられます。私たちの業界で話をするのであれば、スペシャルテスト(整形外科テスト)が主な例として挙げられます。
求め方
言葉の定義
真陽性(TP:True Positive):実際に陽性であり、テストの結果も陽性
真陰性(TN:True Negative):実際に陰性であり、テストの結果も陰性
偽陽性(FP:False Positive):実際は陰性であるが、テストの結果は陽性
偽陰性(FN:False Negative):実際は陽性であるが、テストの結果は陰性
計算方法
それでは感度と特異度とはどのように計算されるのでしょうか。
わかりやすいように、足関節の靭帯損傷のテストということで説明していきます。
まず、感度・特異度とは下記のように計算されます。
感度:実際に靭帯を損傷した人の中で、テストで陽性になった人の割合
特異度:実際には靭帯を損傷していない人の中で、テストで陰性になった人の割合
感度のことを真陽性率、特異度のことを真陰性率という人もいますが意味は同じです。
スペシャルテストにおける感度・特異度の意義
感度と特異度の計算方法は上記の通りに計算しますが、それでは実際の臨床やスポーツ現場で行われるスペシャルテストの感度・特異度が高い、低いということはどのように意味なのでしょうか。
感度
まず感度について見ていきましょう。引き続き足関節の靭帯損傷の例で行くと、感度は靭帯損傷した全員の中でテストが陽性になる確率です。この確率が高いということは、偽陰性(上の式でいうFN)の確率が低いということです。言い換えると、靭帯損傷はしているのにテストでは陰性だったという人が少ないという意味になります。例えば、テストで陰性だった、となれば、靭帯が切れていなくて陰性(真陰性)なのか、靭帯が切れていても陰性(偽陰性)なのかわかりません。そこで、感度が高い=偽陰性の確率が低い=そのテストでの陰性はほとんど真陰性と考えて良いということになります。つまり、感度が高いテストというのは、陰性であればその対象の疾患を除外(rule out)できる可能性が高いということになります。
特異度
続いて特異度についてです。特異度は靭帯損傷をしていない人を全員テストし、陰性になった確率です。この確率が高いということは、偽陽性(上の式でいうFP)の確率が低いということです。言い換えると、靭帯損傷はしていないのにテストでは陽性だったという人が少ないという意味になります。例えば、テストで陽性だった、となれば、靭帯が切れていて陽性(真陽性)なのか、切れていなくても陽性(偽陽性)なのかわかりません。そこで特異度が高い=偽陽性の確率が低い=そのテストでの陽性はほとんど真陽性と考えて良いということになります。つまり、特異度が高いテストというのは、陽性であればその対象の疾患が示唆される(rule in)可能性が高いということになります。
わかりやすく極端な言い方をすると、感度(特異度)が高いテストはなかなか陰性(陽性)になりにくく、それでも陰性(陽性)になるってことは実際に陰性(陽性)だよねっといった感じです
Likelihood Ratio(尤度比:ゆうどひ)
尤度比とは
感度や特異度の他にLikelihood Ratio(LR)というものがあり、感度や特異度の追加情報のような位置付けで用いられることがあります。LRには+と−があり、
LR+=感度/1-特異度=真陽性率/1-真陰性率=真陽性率/偽陽性率
LR−=1-感度/特異度=1-真陽性率/真陰性率=偽陰性率/真陰性率
で表されます。
細かい話はここではしませんが、LR+は高ければ高いほどテストが陽性であれば実際に陽性である確率が高いということ、そしてLR−は低ければ低いほどテストが陰性であれば実際に陰性である確率が高いということを意味します(下記の分類を参照)。
LR+/LR−の分類
>10.0/<0.1 :陽性/陰性の確率が高い
5.0-10.0/0.1-0.2:陽性/陰性の確率が中程度
2.0-5.0/0.2-0.5:陽性/陰性の確率が低い
1.0-2.0/0.5-1.0:陽性/陰性の確率がかなり低い*1
実際の臨床ではこちらの方が使いやすいのかもしれません。
海外のスペシャルテストや評価の本などには感度と特異度だけでなく、尤度比も記載されているものが多い印象です。
これらの単語は感度・特異度と意味合いが似ているので、混在しないようにしましょう。
ツイッターもやってるのでぜひ交流しましょう!
参考文献
*1:Jaeschke, R., Guyatt, G. H., & Sackett, D. L. (1994). Users' guides to the medical literature. III. How to use an article about a diagnostic test. B. What are the results and will they help me in caring for my patients? The Evidence-Based Medicine Working Group. JAMA, 271(9), 703–707. https://doi.org/10.1001/jama.271.9.703