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プロテインは腎臓に悪い?腎臓の機能と最新エビデンス -健康に筋トレ・タンパク質摂取するために-

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プロテインの摂取は腎臓に悪いとよく世間では言われています。それはどこまで本当なのでしょうか?実際にプロテインを飲むことで健康診断の数値が変化するという人もいると聞きます。生理学的に考えて本当にプロテインは腎臓に悪いのか?そして最新のエビデンスではどのように言われているのかまとめてみました。

 

 

  1. 生理学的にはプロテイン摂取量の増加は腎臓に負担がかかる
  2. しかしその負担は病気や腎機能低下を引き起こすほどのものでもない
  3. 腎機能低下と腎臓病をお持ちの方はプロテインは控えた方が良い

 

腎臓の機能

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腎臓には糸球体という組織が存在し、そこで老廃物などを濾過する機能があります。腎動脈から入ってきた血液は輸入細動脈を通り糸球体に入ります。濾過されたのち、輸出細動脈を通り、傍尿細管毛細血管にいき、腎静脈をへて腎臓外に出て行きます。この糸球体での濾過においてまずほぼ全ての物質が糸球体ボーマン嚢を通りますが、その量は1日180-198L/日になります。ナトリウムなどのイオン・アミノ酸などは糸球体を通過したのち、傍尿細管毛細血管にほぼ100%再吸収されます

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ここで題名にある、プロテインと腎臓の関係について説明します。プロテインの主な栄養素はタンパク質です。そしてタンパク質は最終的にアミノ酸に変換されます。上記のようにアミノ酸は糸球体を通過したのち、再吸収されるという流れを辿ります。ここで摂取するタンパク質が増加すると、糸球体を通過するアミノ酸が増加します。つまり腎臓に負担がかかるというのは厳密にいうと腎臓の糸球体に負担がかかるということになります。また、腎臓は肝臓などと違い、再生する力が弱く、機能低下してしまった腎臓の機能を元に戻すのは至難の技です。消耗品という言い方もできるでしょう。また、たんぱく質にはリンが含まれているため、アミノ酸に分解していく際にリンが発生するのですが、これは先ほどの糸球体によって濾過され、体外に排出されますが、腎機能が低下するとリンが体内に貯蓄してしまい、高リン血症になってしまう可能性があります。しかし、これはあくまで生理学的な話であって、プロテインの過剰摂取、つまり糸球体を通過するアミノ酸の増加はどれほど腎臓の機能に影響するのでしょうか?

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また、イオンやアミノ酸が糸球体を通過する割合のことをGlomerular Filtration Rate(GFR)と言います。このGFRが増加するということは生理学的にいうと腎臓に負担がかかっていると言えます。
 

 

エビデンス 

腎機能が正常な人への影響

ここからはエビデンスの話になります。生理学的にはプロテインたんぱく質)の摂取は腎臓の糸球体への負荷に繋がる可能性はありますが、実際にエビデンスに着目してみると、2018年に発表されたメタアナリティクスの研究ですが、高たんぱく質の食事をした方と、低たんぱく質〜通常のたんぱく質量の食事をした人とでは腎機能への影響は変わらなかったと報告されています*1。また、健常な人のたんぱく質の摂取量の上限ですが、上限を定めるような明確なエビデンスは今の所見られず、合計摂取カロリーの10-35%であればまず問題ないとされています*2。性差についてですが、腎機能が正常な女性を対象にした研究でもプロテイン(高たんぱく質)の摂取は腎機能の低下に影響しないと報告しています*3男女関係なくプロテインの摂取は腎機能が正常であれば問題なさそうです。これらのことからプロテイン(高たんぱく質)の摂取は、生理学的な糸球体への負荷はあるものの、実際に病気を引き起こしたり腎機能を低下させたりするほどのものではないということが言えます。

 

腎機能低下している人への高たんぱく質の影響

腎機能が低下している人に対してはプロテイン(高たんぱく質)の食事をすると腎機能が低下する可能性があると示唆されています*4。また妊娠中の女性の場合ですが、妊娠前の腎機能が正常でも、妊娠中のプロテインの摂取は糸球体での濾過率(GFR)が上昇して腎機能の低下を引き起こす可能性があります*5。そして腎臓の病気をすでに持っている方はプロテインの摂取によってGFRの増加、そして内分泌系によって腎臓の病気を悪化させてしまいます*6。腎機能が低下している方とすでに腎臓病をお持ちの方はプロテイン(高たんぱく質)の摂取は控えた方が良さそうです。上記の図にあるように、タンパク質の分解の過程でリンが産生されます。腎臓機能が低下しているとこのリンが排出できなくなるため、腎臓機能が低下している人はタンパク質ではなく、すでに分解されたアミノ酸(EAAなど)を摂取すると良いかもしれません。

  

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参考文献

*1:Devries, M. C., Sithamparapillai, A., Brimble, K. S., Banfield, L., Morton, R. W., & Phillips, S. M. (2018). Changes in Kidney Function Do Not Differ between Healthy Adults Consuming Higher- Compared with Lower- or Normal-Protein Diets: A Systematic Review and Meta-Analysis. The Journal of nutrition148(11), 1760–1775. https://doi.org/10.1093/jn/nxy197

*2:Trumbo, P., Schlicker, S., Yates, A. A., Poos, M., & Food and Nutrition Board of the Institute of Medicine, The National Academies (2002). Dietary reference intakes for energy, carbohydrate, fiber, fat, fatty acids, cholesterol, protein and amino acids. Journal of the American Dietetic Association102(11), 1621–1630. https://doi.org/10.1016/s0002-8223(02)90346-9

*3:Johnson, D. W., Mudge, D. W., Sturtevant, J. M., Hawley, C. M., Campbell, S. B., Isbel, N. M., & Hollett, P. (2003). Predictors of decline of residual renal function in new peritoneal dialysis patients. Peritoneal dialysis international : journal of the International Society for Peritoneal Dialysis23(3), 276–283.

*4:Knight, E. L., Stampfer, M. J., Hankinson, S. E., Spiegelman, D., & Curhan, G. C. (2003). The impact of protein intake on renal function decline in women with normal renal function or mild renal insufficiency. Annals of internal medicine138(6), 460–467. https://doi.org/10.7326/0003-4819-138-6-200303180-00009

*5:Conrad K. P. (2004). Mechanisms of renal vasodilation and hyperfiltration during pregnancy. Journal of the Society for Gynecologic Investigation11(7), 438–448. https://doi.org/10.1016/j.jsgi.2004.05.002

*6:Lentine, K., & Wrone, E. M. (2004). New insights into protein intake and progression of renal disease. Current opinion in nephrology and hypertension13(3), 333–336. https://doi.org/10.1097/00041552-200405000-00011