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Phalen's Test(ファーレンテスト)-陽性基準・感度・特異度とスクリーニング-

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ファーレンテストは手根管症候群の評価として用いられるテストです。手根管症候群の病態は難しく、スペシャルテストなどの陽性の判断に基づく診断が複雑なので、今回はファーレンテストのエビデンス(感度・特異度)に手根管症候群のスクリーニングを加えて説明していきたいと思います。 

 

 

手根管症候群とは?

手根管症候群は末梢神経障害の1つで、手根管において正中神経が何らかの原因で手根管内の圧が高まり、神経が圧迫されて生じる病態のことです。手根管は手根横靭帯(屈筋支帯)が上境界を構成し、手根骨との間に正中神経と9つの屈筋腱(深指屈筋からの4つの腱、浅指屈筋からの4つの腱、および長母指屈筋からの1つの腱)が走行しています。

主な症状
疼痛と手と手指にかけて神経痛
手指に痺れ(特に母指、示指、中指)
手関節の疼痛
腕にかけての放散痛
正中神経領域での皮膚の病変(手根管での血管の圧迫による)
※疼痛は夜に悪化することが多く、運転やタイピングなどの日常生活でも悪化します。

 

 

Phalen's Test(ファーレンテスト)とは?

ファーレンテストは症状を誘発することで手根管症候群の有無を判断するために用いられるテストです。このテストでは手関節にて正中神経に対して圧迫もしくは負荷を掛けます。ちなみに各髄節の分布ですが、

C6 -->前腕の外側 -->手関節伸筋群
C7 -->中指-->手関節屈筋群
C8 -->前腕内側-->環指・小指屈筋群
T1  -->上腕内側

になり、これらの領域の感覚の評価などは手根管症候群をはじめとするニューロパチーの評価で大切になります。

 

 

方法

やり方

通常:患者は座位にて肘をテーブルに置き、手背同士を合わせ、手首が最大の屈曲状態になるようにします。患者は両手背で押し合い、この位置を30〜60秒間保持するように求められます。この位置は、手根管内の圧力を増加させ、正中神経への負荷が高まります。

別法:患者は肘を0°-30°の間で曲げたままにします。次に、患者は自動にて前腕を回外します。この後、検者は他動にて手関節掌屈させ、この位置を60秒間保持します。この間、15秒毎に症状を聞きます。

逆ファーレンテスト:患者は手関節と手指を完全伸展した状態を2分間維持します。開始10秒ほどで手根管内の圧力が増加します。この姿勢を維持すればするほど手根管内の圧も増加していきます。

ファーレンテストと逆ファーレンテスト間の圧力の変化を比較する研究では、ファーレン試験の平均圧力変化は、2分間で4 mmHgであったのに対し、逆ファーレン試験では1分間で34 mmHg、2分間で42 mmHgになるとのことです*1。したがって、逆ファーレンテストは、手根管を真に圧迫し、手根管症候群の症状を誘発するためのより適切な臨床テストになる可能性があります。 

 

陽性基準

上記の姿勢を取っている間、疼痛が再現もしくは、正中神経領域に痺れなどの神経症状が出たら陽性で、疼痛およびそのほかの症状が出なければ陰性になります。

 

 

エビデンス

このテストとしては感度よりも特異度がやや高いのが特徴で、89%であることからこのテストで陽性だった場合手根管症候群の疑いが強くなります(rule in)。しかし、これだけで判断するのは危険なので、もし症状と合致しないようであれば、後述するスクリーニングテストを行うことが推奨されています。

感度:85%

特異度:89%*2

 

 

Clinical Prediction Rules(CPR):手根管症候群のスクリーニング

スクリーニング

Clinical Prediction Rules(CPR)は、手根管症候群のスクリーニングテストとして臨床症状や身体的所見を組み合わせて、臨床医が特定の診断の確率を高めるために用いられています。 2005年にWainnerらは手根管症候群の診断においてレベルIVのCPRを発表しました*3

CPRは以下の5項目によって構成されています。 

Clinical Prediction Rules

1.症状を和らげるために手を振る

2.手関節比率インデックス >.67

3. 症状重症度スケール > 1.9(平均値)

4. 正中神経領域(親指)の感覚低下

5. 45歳以上

 

方法

手関節比率インデックス(Wrist Ratio Index)

手関節の腹背側の幅と左右の幅を測定し、腹背側の幅÷左右の幅で計算されます。0.70以上(この試験単独の場合)であれば手根管症候群が疑われます*4

症状重症度スケール(Symptom Severity Scale)

手根管症候群の代表的な症状としてみられる6つの重要な項目である痛み、感覚異常、しびれ、脱力感、夜間の症状、および全体的な機能障害を調べる11項目の質問での評価テストです。 各質問のスコアは1(最も軽い症状)から5(最も重い症状)まであります。 したがって、スコアが高いほど、手根管症候群の可能性が高いことを示します*5

 

エビデンス

上記の5つの試験の中いくつ当てはまるかで判断します。下の表を参照してもらえればわかりますが、陽性の項目が増えるほど特異度が高くなっていきます。3つ以上陽性のところ感度が98%なので、陰性の人、つまり2つ以下しか当てはまらない人は手根管症候群の可能性が低いということがわかります。反対に5つ全て当てはまってしまう人は手根管症候群の可能性が高いということがわかります。

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参考文献

*1:TINEL’S, S. I. G. N. (2000). Tinel’s sign and Phalen’s maneuver: physical signs of carpal tunnel syndrome. Hospital Physician, 39.

*2:Brüske, J., Bednarski, M., Grzelec, H., & Zyluk, A. (2002). The usefulness of the Phalen test and the Hoffmann-Tinel sign in the diagnosis of carpal tunnel syndrome. Acta orthopaedica Belgica68(2), 141–145.

*3:Wainner, R. S., Fritz, J. M., Irrgang, J. J., Delitto, A., Allison, S., & Boninger, M. L. (2005). Development of a clinical prediction rule for the diagnosis of carpal tunnel syndrome. Archives of physical medicine and rehabilitation86(4), 609–618. https://doi.org/10.1016/j.apmr.2004.11.008

*4:Johnson, E. W., Gatens, T., Poindexter, D., & Bowers, D. (1983). Wrist dimensions: correlation with median sensory latencies. Archives of physical medicine and rehabilitation64(11), 556–557.

*5:Levine, D. W., Simmons, B. P., Koris, M. J., Daltroy, L. H., Hohl, G. G., Fossel, A. H., & Katz, J. N. (1993). A self-administered questionnaire for the assessment of severity of symptoms and functional status in carpal tunnel syndrome. The Journal of bone and joint surgery. American volume75(11), 1585–1592. https://doi.org/10.2106/00004623-199311000-00002