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臨床家が知るべき筋緊張のメカニズム -筋緊張異常と評価-

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筋緊張とは

筋緊張とは文字通り筋肉の緊張のことを指し、脳卒中などの中枢神経系疾患やスポーツなどによる過度な疲労、先天的な要因など様々な要素が筋緊張に関わってきます。そのため、筋緊張の評価は筋肉を評価するためなどに用いられることが多いです。理学療法士の方であれば打腱器を用いて筋肉を外的評価していると思います。特に脳卒中などの中枢神経系疾患に対する筋緊張の評価は重要で、−、±、+〜4+まで評価していきます。

 

 

筋緊張のメカニズム

ここで筋緊張の詳しい神経生理学的なメカニズムについてお伝えしていきます。

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筋緊張と一言で言っても構造は複雑で、私たちが打腱器などで評価しているものはあくまで最終的にアウトプットされたものを評価しているに過ぎません。それではその最終的なアウトプットまでの流れをお伝えしていきます。

まず、筋肉の中には錘外筋線維と錘内筋線維の2種類あります。錘内筋線維がいわゆるセンサーの役割を果たし、筋肉の「緊張」を保ちます。筋肉はいきなり伸長されると筋線維を守るために収縮をすることで筋線維の損傷を防ぎます。これが伸長反射と言われるものです。この伸長反射にはこのセンサーが大切になってきます。センサーが筋肉が伸長されていることをしっかり感知できていないとこの伸長反射は起きません。そのセンサーですが、基本的にⅠa線維とⅡ線維に別れます。Ⅰa線維は筋線維の長さと収縮速度を感知し、Ⅱ線維は長さを感知します(上の図でいう①)。つまり、センサーは筋線維の長さの変化と収縮の速度に依存するということです。

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wikipediaより画像引用

このセンサーの感度ですが、Ⅰa線維とⅡ線維だけでコントロールはしていません。そもそもこの錘内筋線維はcontractileとnon-contractile線維に分かれており、Ⅰa線維とⅡ線維はnon-contractileに付着します。このnon-contractile線維がゆるゆるの状態であれば、センサーがしっかりと反応しなくなってしまいます。そのため、このnon-contractile線維の緊張を常に保つためにγ運動ニューロンがcontractile線維を収縮させ、non-contractile線維を引っ張ります。これによってnon-contratile線維の緊張を保ち、Ⅰa線維とⅡ線維のセンサーとしての感度が保てるわけです(α-γ連関)。これらのセンサーによって感知したものは脊髄で処理され、運動神経(α運動ニューロン)を通り錘外筋線維にアウトプットするという形になります。

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次に知っておくべき点はゴルジ腱器官による錘外筋線維(α運動ニューロン)の抑制です。Ⅰb線維は筋ではなく腱に存在し、腱の伸長を感知し、脊髄を通してα運動ニューロンの抑制に働きかけます。

これらによって私たちが評価しているのはこのα運動ニューロンを通してアウトプットされたものを評価しているわけです。つまり、筋緊張に問題があることがわかってもそれだけではⅠa線維とⅡ線維の感覚神経の問題なのか、脊髄での処理の問題なのか、α運動ニューロンの問題なのかはわからないということです。臨床家はこのことを知っておくべきでしょう。

 

 

筋緊張への介入

筋緊張を改善するにはどうすれば良いでしょうか?上記で説明した通り、様々な経路を通してα運動ニューロンを通してアウトプットされるわけですから、なんとかしてこのα運動ニューロンに影響を与えたいわけです。筋緊張に問題がある場合、大きく分けて過緊張と低緊張に分けられると思います。それぞれの介入方法について見てみましょう。

 

過緊張に対する介入

Ⅰa抑制

まずはⅠa抑制です。Ⅰa抑制ですが、相反抑制ともいいます。筋を収縮させる際に、拮抗筋のα運動ニューロンに抑制がかかり、筋緊張が抑制されます。つまり、筋緊張を抑制したい側と反対側の筋の収縮を促すことで対象の筋緊張を抑制することができます。

Ⅰb抑制

次にⅠb抑制です。上記で説明したように、Ⅰb線維は腱に存在し、腱が伸長するとα運動ニューロンを抑制する働きがあります。簡単にいうとⅠb線維が存在する腱(ゴルジ腱器官)を伸長させれば良いのです。難しく書いていますが、いわゆるストレッチをすることでゴルジ腱器官は伸長されます。ストレッチの他にhold&relaxなどの手技(アイソメトリック収縮を5-10秒ほどさせる)でもⅠb抑制を生じさせることができます。

反回抑制(recurrent inhibition)

反回抑制は上記の2つに比べてあまり聞いたことがない人が多いのではないでしょうか。反回抑制でポイントになってくるのがレンショウ細胞です。レンショウ細胞は脊髄の灰白質に存在する抑制ニューロンでα運動ニューロンとも連携します。レンショウ細胞は同側のα運動ニューロンが興奮することで働き、同じα運動ニューロンを抑制します。ただ、常に働いているわけではなく、ある一定の条件の時にのみ働きます(そうでないと関節運動が行えないので)。

興奮条件(レンショウ細胞が興奮=α運動ニューロンが抑制される)

  • 弱い収縮力をはっきしている時
  • 拮抗筋とともに協調している時

抑制条件(レンショウ細胞が抑制=α運動ニューロンは抑制されない)

  • 強い収縮力をはっきしている時
  • 持続的に一定の収縮力を保つよりも出力に波のある収縮の方がより抑制される

 上記のことから反回抑制を狙って筋緊張を抑制したい場合には弱い収縮を繰り返すと言ったリラクセーションに近い手技が有効のようです。

 

低緊張に対する介入

低緊張に対する介入ですが、一般的にレジスタンストレーニングが推奨されています。ただしこのような言い方だと脳卒中など過度に筋緊張亢進している方にレジスタンストレーニングをすると悪化してしまうのではないかという方がいますが、レジスタンストレーニングはすればするほど筋緊張が亢進していくわけではありません。実際に脳卒中の方にレジスタンストレーニングを行わせても筋緊張は亢進せずに筋力強化することができます*1

 

 

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参考文献 

*1:Flansbjer, U. B., Miller, M., Downham, D., & Lexell, J. (2008). Progressive resistance training after stroke: effects on muscle strength, muscle tone, gait performance and perceived participation. Journal of rehabilitation medicine, 40(1), 42–48. https://doi.org/10.2340/16501977-0129