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怪我時などに筋肉・持久力を維持するためのトレーニング戦略

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コロナの時期で十分なトレーニングができなかった人は多いのではないでしょうか?トレーニング量の低下によって体力や筋力の低下を感じた人は多いのかもしれません。アスリートにおいては、コロナとは関係ありませんが、怪我によって十分なトレーニングをつめない、もしくはシーズン中などの疲労によってトレーニングを数多くできないといったことは多々あります。そこで、今回は筋肉(筋量)・持久力を向上するまでは行かずとも維持するためにどのようにトレーニングを行えば良いのかをお伝えできればと思います。

 

怪我の影響

怪我をすることによってトレーニング量が確保できずに筋肉量が落ちてしまいますが、それに加えて、怪我による炎症、手術をしたのであればそれによる炎症も含め、その炎症自体が筋肉の萎縮を促してしまいます*1。アスリートにとって怪我というものの影響は強いでしょう。

 

十分なトレーニングができない時の対処法

栄養面

十分なトレーニングができない場合、トレーニングプランの工夫と、栄養面での工夫が必要になってきます。まず栄養面ですが、筋肉の萎縮を防ぐために最も重要な栄養素はタンパク質です。具体的な量ですが、体重1kgあたり1.6~2.5g必要であるという報告もあります*2。なので、体重60kgくらいの人であれば1日120gくらいのタンパク質を摂取しておく必要があることになります。この数値はアスリート向けの値になります。高齢者を対象にしたものでは、体重1kgあたり1日1.0~1.2gが目安になってきます*3

 

運動面

運動面ですが、アメリカスポーツ医学会(ACSM)では有酸素能力を維持したいのであれば、1日に20分以上、週に3回以上(1週間に合計75分以上)の有酸素運動を取り入れるべきであると述べています*4。現在は様々な機器があり、免荷して走ることができるトレッドミルや、上肢エルゴメーターなどあるので、それらを用いて、怪我をしている間に有酸素能力を維持することができます。

個人的にはやはり持久力は肺活量だけでなく、下肢の筋の緩衝能力が大事だと思っているので、できるだけ下肢の有酸素運動を取り入れたいものです。

続いて筋量の維持についてです。ラットを対象にした研究ではアイソメトリック、コンセントリック、エキセントリックを組み合わせたトレーニングや強度の高いレジスタンストレーニングを行うことで筋の萎縮を防ぐことができるという報告が多いです*5*6。このことから筋萎縮を予防するにはレジスタンストレーニングもしくはエキセントリックトレーニングを行うことが推奨されます。さらにトレーニングを中止することで遅筋線維よりも速筋線維の方が萎縮してしまう*7ことも影響しているのかもしれません。つまり、速筋線維にアプローチできるエキセントリックトレーニングの方が有効であると言えます。それでは具体的にどのくらいの負荷を掛けていけば良いのかというと最低でも60%1RMの負荷はかける必要があります*8*9。つまり、かるべく幹部の負荷を考慮しながら60%1RMの負荷を掛けていくことがトレーナーの腕が試されることでしょう。また加圧トレーニングでは20%1RMの強度でも効果があると言われているので*10、加圧トレーニングも方法の1つかもしれません。

 

注意すべき点

よくトレーナー(特にメディカル系)の方でエキセントリックのトレーニングは疲労が蓄積し、筋肉痛によって競技の練習ができないからあまりやらないといった方がいらっしゃいます。そういった方にどのようなトレーニングをしているのかと質問すると、ファンクショナルなトレーニングやアイソメトリックトレーニングを取り入れている方が多いです。もちろん、競技の練習の方が優先されますし、人によってはエキセントリックトレーニングを取り入れない方が良い選手もいるかもしれません。そういった状況は置いておいて、エビデンスの観点ではラットの研究ではありますが、アイソメトリックトレーニングのみだと筋萎縮を防止するのは難しいと言えます*11

 

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参考文献

*1:Bonaldo, P., & Sandri, M. (2013). Cellular and molecular mechanisms of muscle atrophy. Disease models & mechanisms, 6(1), 25–39. https://doi.org/10.1242/dmm.010389

*2:Wall, B. T., Morton, J. P., & van Loon, L. J. (2015). Strategies to maintain skeletal muscle mass in the injured athlete: nutritional considerations and exercise mimetics. European journal of sport science, 15(1), 53–62. https://doi.org/10.1080/17461391.2014.936326

*3:Deutz, N. E., Bauer, J. M., Barazzoni, R., Biolo, G., Boirie, Y., Bosy-Westphal, A., ... & Singer, P. (2014). Protein intake and exercise for optimal muscle function with aging: recommendations from the ESPEN Expert Group. Clinical nutrition, 33(6), 929-936.

*4:Thompson, P. D., Arena, R., Riebe, D., Pescatello, L. S., & American College of Sports Medicine (2013). ACSM's new preparticipation health screening recommendations from ACSM's guidelines for exercise testing and prescription, ninth edition. Current sports medicine reports, 12(4), 215–217. https://doi.org/10.1249/JSR.0b013e31829a68cf

*5:De Souza, R. W. A., Aguiar, A. F., Carani, F. R., Campos, G. E. R., Padovani, C. R., & Silva, M. D. P. (2011). High‐Intensity Resistance Training with Insufficient Recovery Time Between Bouts Induce Atrophy and Alterations in Myosin Heavy Chain Content in Rat Skeletal Muscle. The Anatomical Record: Advances in Integrative Anatomy and Evolutionary Biology, 294(8), 1393-1400.

*6:Krug, A. L., Macedo, A. G., Zago, A. S., Rush, J. W., Santos, C. F., & Amaral, S. L. (2016). High‐intensity resistance training attenuates dexamethasone‐induced muscle atrophy. Muscle & nerve, 53(5), 779-788.

*7:MacDougall, J. D., Elder, G. C., Sale, D. G., Moroz, J. R., & Sutton, J. R. (1980). Effects of strength training and immobilization on human muscle fibres. European journal of applied physiology and occupational physiology, 43(1), 25–34. https://doi.org/10.1007/BF00421352

*8:Phillips S. M. (2009). Physiologic and molecular bases of muscle hypertrophy and atrophy: impact of resistance exercise on human skeletal muscle (protein and exercise dose effects). Applied physiology, nutrition, and metabolism = Physiologie appliquee, nutrition et metabolisme, 34(3), 403–410. https://doi.org/10.1139/H09-042

*9:Kumar, V., Selby, A., Rankin, D., Patel, R., Atherton, P., Hildebrandt, W., Williams, J., Smith, K., Seynnes, O., Hiscock, N., & Rennie, M. J. (2009). Age-related differences in the dose-response relationship of muscle protein synthesis to resistance exercise in young and old men. The Journal of physiology, 587(1), 211–217. https://doi.org/10.1113/jphysiol.2008.164483

*10:Fujita, S., Abe, T., Drummond, M. J., Cadenas, J. G., Dreyer, H. C., Sato, Y., Volpi, E., & Rasmussen, B. B. (2007). Blood flow restriction during low-intensity resistance exercise increases S6K1 phosphorylation and muscle protein synthesis. Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985), 103(3), 903–910. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00195.2007

*11:Haddad, F., Adams, G. R., Bodell, P. W., & Baldwin, K. M. (2006). Isometric resistance exercise fails to counteract skeletal muscle atrophy processes during the initial stages of unloading. Journal of applied physiology (Bethesda, Md. : 1985), 100(2), 433–441. https://doi.org/10.1152/japplphysiol.01203.2005