今回は腰痛のスクリーニングについてお話ししたいと思います。
スクリーニングとは診断や評価と違い、症状の原因がどこにあるのかを詳細に追求するのではなく、まず、理学療法士が介入できるかどうか、つまり理学療法の範囲で治療できるかどうかの判断になります。
そのためこの手順は患者さんがきて最初に行います。
オランダ理学療法士協会のガイドラインでは以下の病気は、Red Flagといって医師に送らなければいけない基準となっております。
強直性脊椎炎
定義:脊椎の関節に長期にわたる炎症がある関節炎のタイプ。主に男性(特に若い)で発生し、完治には3ヶ月以上かかります。仙腸関節と脊椎に影響します。HLA B27抗原は、発症要因の1つです。
症状:
・安静時の痛み(夜の痛み)
・動くことで改善する
・脊椎のこわばり
まずは運動器に関連する疼痛かどうかを判断しなければなりません。
運動器に関連する疼痛であれば、安静時には軽快するはずですし、動いた方が疼痛が生じやすくなるはずです。しかし、強直性脊椎炎ではその反対に症状が出るので、問診などで、絞っていきたいところです。
骨粗鬆症による脊椎骨折
定義:骨粗鬆症によって引き起こされる骨折です。骨粗鬆症は、骨の劣化または骨量の減少により骨がより脆弱になる状態です。骨が弱いか、壊れやすいと、骨折のリスクが高くなります。危険因子は、ステロイドを使用した最近の骨折(この2年間)、60歳以上、低体重(60kg <または20BMI <)です。外傷によっても年齢に関係なく骨折も引き起こします。
症状:
・棘突起の叩打痛
・胸椎の強い後彎
・極端な脊椎の長さの変化
どの場所もそうですが、骨折の疑いがある場合は医師に送る必要があります。
叩打痛などの理学療法初見でもそうですが、まずは問診などで必要な情報は聞き出すべきだと思います。
悪性腫瘍
定義:隣接する組織に侵入する可能性があり、周囲の組織に広がる可能性がある癌の特徴として最もよく知られています。良性腫瘍にはこれらの特性はありません。危険因子は50歳以上で、悪性腫瘍の病歴があります。
症状:
・姿勢や動きに関係なく痛みが続く
・夜間痛
・不快感
・原因不明の減量
・高BSE
腫瘍による疼痛もしっかりと鑑別していきたいところです。前述しましたが、運動器による疼痛かどうかというのはしっかりと鑑別しなければならないので、動きに関係ない疼痛や夜間痛は特に注意して情報として得ていきたいところです。
腫瘍もそうですが、個人的な経験として胃潰瘍といった消化器系の問題でも腰痛を訴える方がいます。そういった方がよく言うのが食事時に疼痛があるといった消化器系特有の症状があることです。これも運動器の問題では起こりえない症状なので、細かく問診していく必要があります
脊椎すべり症
定義:下部腰椎でよく起こる脊椎疾患。この疾患では、下部の椎骨がその上の椎骨に対して前方にずれ込みます。痛みを伴う状態ですが、ほとんどの場合治療可能です。危険因子は若い年齢(10代)が挙げられます。
症状:
・特異的な疼痛(スペシャルテストなどで鑑別)
・棘突起の触診(感度87%、特異度60-88%)
これは他の疾患と違い運動器の疾患ではあるのですが、症状の程度が重いということでRed Flagに入ります。ここでは詳細は割愛しますが(腰部のスペシャルテスト集を参考)、腰椎を中心としたスペシャルテストも合わせてここは鑑別して行く必要があります。
いかがでしたか?患者さんが直接理学療法士の所へ来る国では本来理学療法士が治療する運動器の問題によるものではない場合も時々あります。これらをしっかりと鑑別していかないといけません。日本では馴染みのないスクリーニングですが、スポーツ現場だったり、パーソナルトレーニング中などで、誰かが腰痛を訴えて来た場合はすぐに評価に移るのではなく、こういったものを鑑別してから評価していく方が良いと思います。
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