五臓六腑とは陰の臓器(五腑)と陽の臓器(六腑)と三焦のことで、西洋医学における内臓にあたります。
それぞれ五行の成分に沿って別れ、1つの成分あたり陰の臓器を1つ、陽の臓器を1つ持ちます。
それぞれの臓器には役割があります。
また、西洋医学のように肝臓が〜状態だから〜するといった各論というものは存在せず、他の臓器とどういう関係なのかが診断基準になります。
それでは1つ1つお伝えしていければと思います。
心
心は西洋医学の心臓のことです。
・血を集める
心では谷気(食事によって得られる気)を血に変換させ、血を産生する臓器としての役割があります。また、産生した血を身体中に送るため、心が機能不全に陥ると、血の循環に影響が出てしまいます。
・血管をコントロールする
血管は心の気と心の血に依存しているため、心が機能不全に陥ると、脈が弱くもしくは不整脈になります。脈は心の気の状態を表すバロメーターのような役割を持っています。
・状態が顔と舌に現れる
心の状態は顔に現れ、心の気の不足は青ざめた顔になり、心の血の停滞は濃い青色がかった表情になります。舌にも様々な影響を及ぼします(詳しくは別記事にて)。
・神(shen) (英=mind, spirit) を作る
神とは精神状態、マインドのことで、ここが西洋医学と大きく異なるところです。神とは思考の明確化に影響します。例えば、色々な選択肢があった時に、〜理由でこれを選ぶと言った思考を具現化・明確化し、決断までの思考のことを示しています。心は神に栄養を送ります。そのため、心が機能不全に陥ると、記憶力の低下、考え込んでしまいやすい、不眠症、精神錯乱、不安や動揺などが現れてしまいます。過度な喜びは心に悪影響を与えます。
・汗をコントロールする
汗は前回の記事でお伝えしたように、津液の液でできています。津液と血はお互いに栄養を送りあっており、血を産生する心も津液に影響を及ぼします。
多汗は心の気不足と血と津液の不足、夜中の汗は心の陰不足が示唆されます。
※陰の臓器で心包(英=pericardium)というのがあります。中医学では心包は外からの病的因子に対して心を守る働きをします(特に熱に対して)。心は直接これらから身を守ることはできません。その役割は心包が担っております。ただし、心包には独自の経絡があります。
肝
肝は西洋医学でいう肝臓のことです。
・血の貯蔵
肝は血を貯蔵する役割があります。また、身体活動に合わせて貯蔵量をコントロールします。また、女性にとっては生理が貯蔵量に影響してきます。
・気の流れを管理する
肝によって気を全ての臓器、そしてその他全ての方向に送り込ませることができます。肝以外の臓器の気は特定の流れにしか流れません。しかし肝はあらゆる方向に行けるのが最大の特徴です。
・腱をコントロールする
肝の血が腱に栄養を送っています。
そのため、肝の血が不足すると、可動域が狭まったり、麻痺したり、関節に力が入らなかったりします。
・状態が爪と目に現れる
肝の血は爪にも栄養を送っています。肝の血が不足したら爪は乾燥、割れ、青白くなるなどの症状が出ます。
目にも栄養を送っており、肝の血の不足によって、ぼやけて見える、浮いた点のようなものが見える、ドライアイ、かゆみなどの症状が出ます。
・魂(hun) (英=ethereal soul) を作成する
魂とは意志のことで、計画を立てたり(選択肢を作る)、夢を描くなど、未来に向かうために必要な意志になります。感情の表出に関与し、感情のコントローをすると言う役割があります。神とは違うので間違えないようにしてください。
肺
脾
・変形・変換と輸送を司る
前回の記事でお伝えしたように、気と血の一部は脾で産生されます。谷気に関わっているため、もし脾が機能障害に陥ったら食欲減退、消化不良などが引き起こされます。
また、pureな津液を体の上部に送る輸送のはたらきもあります。
・血をコントロールする
血の元である谷気を作る臓器であるため、血の産生に関わると言えます(いくつかの本では血を産生する臓器として扱われております)。脾の気は血を血管の中にとどめておくことができるため、出血多量を予防します。
・筋と四肢をコントロールする
脾は筋と四肢に栄養を与えます。そのため、体力の指標として扱われるのが脾になります。
・状態が口と唇に出る
脾の状態は口に現れ、咀嚼をコントロールします。脾が健康であれば、口や唇は乾燥などせず、通常の状態を保てる。
・気の上昇をコントロールする
脾は他の臓器の位置を保つはたらきがあります。また、脾の気や谷気は脾によって上昇し、肺や心に運ばれます。ちなみに胃の気は消化のため下降します。
・志(yi) (英=intellect)思考を司る
脾は思考(心配する、集中する、考える、記憶する)を司ります。心も思考を司りますが、脾が司る考えは仕事や学校でのプロセスを考えることであり、心は問題解決のために考えることを司ります。簡単に言うと、勉強のための集中力が志であり、問題解決の際の決定を担うのが神になります。
腎
腎は西洋医学でいう腎臓のことになります。
・精を集め、誕生、成長、再産生、発達に関わる
精は他の記事でお伝えしたように、親から受け継いだものや、出生後に得るものがあり、成長や再産生、発達に関わります。年齢を取るごとに精は減っていきます。
・骨髄を産生し、脳を満たし、骨をコントロールする
東洋医学でいう骨髄は西洋医学と異なり、東洋医学では、骨髄は骨、脳、脊髄を構成します。そのため、東洋医学では腎が脳を構成すると言われております。脳や脊髄は「骨髄の海」と言われます。
・水を集める
腎は三焦の下部に位置し、腎は膀胱に気を送り、生理学的機能を補助します。また、腎は津液を肺から受け取り、腎の陽によって津液をpureとimpureに分別する役割があります。脾に対しては変換と輸送の機能を補助するために熱を送ります。
・気の受け取りをコントロールする
肺から降りてきた気を腎が保持します。この機能が働かないと、呼吸(肺)に問題が生じてしまいます。
・状態が耳、髪の毛、頭に現れる
耳は精を必要とするため、腎の状態が出る部分です。また、頭部や髪の毛も成長するために精が必要なため、腎の状態がこれらの部分に現れます。
腎は2つの門を司ることで排泄をコントロールします。この機能は腎の陽が関わります。腎の陽が機能不全に陥ると、下痢などといった排泄の症状が現れます。
・志(zhi) (英=will power) 意志を司る
腎は意志を司り、目的に向かって焦点を当てることや、モチベーションをあげるはたらきがあります。神によって行われる決断を後押ししたり、決断した選択肢を実際に実行したりします。
・命門
命門は両方の腎の中間に位置します。全ての臓器に熱を与え、機能が正常に働くようにします。その他の役割として、肺から気を受け取る腎を補助する、神を司る心を補助する、性的活動を調和し、精や子宮を温める。などが挙げられます。
次の記事ではこれらの臓器の関係、そして六腑についてお伝えできればと思います。