足関節は構造そのものが複雑で評価していくのが難しいですよね。どの靭帯がどの程度損傷しているのか、徒手で見極めるのは至難の技です。ただ、理学療法士やトレーナーの立場としてはリハビリプログラムに影響される単位で評価していく方が効率が良いですし、そこが最も重要であるとも言えます。私が住んでいるオランダでも、リハビリに影響しないくらいの細かい評価はあまり行いません。そこで今回は足関節の靭帯なのか、血管や神経なのかといった単位で海外の理学療法士がどのように診断していくのかをお伝えできればと思います。
スクリーニング
足関節に限らず、理学療法士がまず行うことはスクリーニングです。スクリーニングとは理学療法が適応なのかどうかを判断することをいいます。理学療法適応でなければ医師に送る必要があります。あの有名なOttawa Ankle Rulesもこの中に入ります。
詳しい足関節のスクリーニングはこちら
靭帯損傷
前方引き出しテスト
目的:足関節の靭帯(特に前距腓靱帯)損傷の有無を評価する
患者の開始姿勢:ベッド上で座位または背臥位にて患側の足が浮く状態にする
セラピストの開始姿勢:患者に対して正面に位置する
セラピストの手:片方の手で患側の足部全体を把持し、もう片方の手で下腿遠位を把持する
動作:他動にて足部を下腿に対して前方に動かす。これを左右行う。
陽性:健側と比較して移動量が大きければ陽性
Note:
カッパ係数:-
Sensitivity 感度:96%
Specificity 特異度:84%(前距腓靱帯に対して)*1
足根管症候群
背屈・外反テスト
目的:足根管症候群の有無を評価する
患者の開始姿勢:ベッド上で座位または背臥位にて患側の足が浮く状態にする
セラピストの開始姿勢:患者に対して正面に位置する
セラピストの手:片方の手は患側足部の遠位部を把持し、反対の手で踵骨を把持する
動作:他動にて患側の足関節背屈・外反、足趾伸展させる。
陽性:足根管の部分に疼痛や痺れなどの症状がでたら陽性
Note:このテストは感度・特異度共に高く、有効なテストです。ただ、神経も伸長させ流ことになるので、ゆっくり行うようにしましょう。
カッパ係数:-
Sensitivity 感度:98%
Specificity 特異度:98%*2
Triple Compression test(トリプル圧迫テスト)
目的:足根管症候群の有無を評価する
患者の開始姿勢:座位もしくは背臥位にて患側の足はベッドの上に置く
セラピストの開始姿勢:患者の足に触れられる位置にいる
セラピストの手:一側の手で足部の遠位部を把持し、もう一方の手で脛骨神経を触診できるような位置に置く
動作:患側の足を片方の手で他動にて底屈させ、もう一方の手で脛骨神経を圧迫する
陽性:脛骨神経由来の症状(脛骨神経支配領域での痺れなど)が出現したら陽性
Note:脛骨動脈が脛骨神経の近くを通っているので、動脈由来の症状が出ることもあるので、その点も注意しましょう。
カッパ係数:-
Sensitivity 感度:86%
Specificity 特異度:100%*3
脛腓靭帯・骨間膜損傷
背屈・外旋テスト
目的:Syndesmosis injury(脛腓靭帯・骨間膜損傷)の有無を評価する
患者の開始姿勢:ベッド上で座位または背臥位にて患側の足が浮く状態にする
セラピストの開始姿勢:患者に対して正面に位置する
セラピストの手:一方の手で患側の踵骨もしくは足部中央部を把持し、もう一方の手で下腿を把持する
動作:患側の足関節を他動にて背屈・外転(外旋)させる
陽性:脛骨と腓骨の間(下腿)部分に疼痛が生じたら陽性
Note:重症な患者は下腿の近位部分にも疼痛を訴えることもあります
カッパ係数:-
Sensitivity 感度:71%
Specificity 特異度:63%*4
Squeeze Test(スクイーズテスト)
目的:Syndesmosis injury(脛腓靭帯・骨間膜損傷)の有無を評価する
患者の開始姿勢:背臥位にて患側の膝を立てる
セラピストの開始姿勢:患側の下肢側に位置する
セラピストの手:両手で下腿を挟むように把持する
動作:下から脛骨と腓骨の間を狭めるように圧迫する
陽性:脛骨と腓骨間に疼痛が生じたら陽性
Note:このテストでは感度が低いので、背屈・外旋テストも併用してrule inする方が良いです
カッパ係数:-
Sensitivity 感度:30%
Specificity 特異度:94%*5
他の部位のスペシャルテストの記事もあるので、よかったらご参照ください!
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参考文献
*1:van Dijk, C. N., Mol, B. W., Lim, L. S., Marti, R. K., & Bossuyt, P. M. (1996). Diagnosis of ligament rupture of the ankle joint. Physical examination, arthrography, stress radiography and sonography compared in 160 patients after inversion trauma. Acta orthopaedica Scandinavica, 67(6), 566–570. https://doi.org/10.3109/17453679608997757
*2:Kinoshita, M., Okuda, R., Morikawa, J., Jotoku, T., & Abe, M. (2001). The dorsiflexion-eversion test for diagnosis of tarsal tunnel syndrome. The Journal of bone and joint surgery. American volume, 83(12), 1835–1839. https://doi.org/10.2106/00004623-200112000-00011
*3:Abouelela, A. A., & Zohiery, A. K. (2012). The triple compression stress test for diagnosis of tarsal tunnel syndrome. Foot (Edinburgh, Scotland), 22(3), 146–149. https://doi.org/10.1016/j.foot.2012.02.002
*4:Sman, A. D., Hiller, C. E., & Refshauge, K. M. (2013). Diagnostic accuracy of clinical tests for diagnosis of ankle syndesmosis injury: a systematic review. British journal of sports medicine, 47(10), 620–628. https://doi.org/10.1136/bjsports-2012-091702
*5:de César, P. C., Avila, E. M., & de Abreu, M. R. (2011). Comparison of magnetic resonance imaging to physical examination for syndesmotic injury after lateral ankle sprain. Foot & ankle international, 32(12), 1110–1114. https://doi.org/10.3113/FAI.2011.1110