二刀流トレーナーの海外医科学図書館

二刀流【メディカル(診断・治療・リハビリ)とストレングス(トレーニング・栄養)】に渡るジェネラリストへ

AMPKのはたらきと運動との関係

f:id:dogknt:20200621180414j:plain

 

AMPKは癌細胞やその他の病気との関係が深く、その分野の方の間ではよく話題に上がる物質の1つです。しかし、そのような病気だけではなく、スポーツ分野においてもAMPKの知識は必要になってきます。トレーニングをしたときにどのようにAMPKが働くのか、どう影響するのかをお伝えできればと思います。

 

 

AMPKとは 

AMPKとはAMP活性化プロテインキナーゼの略で、細胞においてエネルギーの恒常性(ホメオスタシス)に関わる酵素です。主に脳、肝臓、骨格筋に存在します。肝臓と骨格筋中では脂肪酸の酸化(β酸化)、骨格筋のグルコースの取り込み、ケトン体産生を促進し、コレステロール産生、脂肪産生(トリグリセリド産生)、タンパク質合成、そしてインスリン分泌を抑制します。

f:id:dogknt:20200624021419j:plain



AMPKの活性化

AMPKはどのようにして活性化されるのでしょうか?近年、AMPKはオートファジーなどの細胞の成長過程に関与することがわかっており、トレーニング関係者だけでなく癌関係の医療者にも注目を浴びています*1。そして重要なのはその活性化する方法です。AMPKはT172でのαサブユニットがリン酸化されない限り、活性化されません。また骨格筋においてLKB1の活性化がAMPKを活性化させる働きがあることがわかっています*2*3。このLKB1は筋の収縮によって活性化されます*4。また、筋は収縮する際にATPを消費し、AMPとADPが増加します。AMPKはAMPとADPの濃度増加をセンサーとして反応します。つまり、筋収縮(特にAMPが産生されるほどの運動強度)によってAMPKが活性化されるということです。ちなみにAMPKのサブユニットとしてα1は高強度、α2は低強度のトレーニングによって向上します*5

f:id:dogknt:20200624045900j:plain

 

 

AMPKの筋肥大への影響

AMPKの活性化によってGLUT4でのグルコースの取り込みが増加するので、エネルギーを消費しやすくなります。このようにAMPKはエネルギーの確保に働きます。筋肥大に関してですが、よくAMPKはmTORを抑制するから筋肥大を抑制してしまうということを聞きます。しかし、AMPKのmTOR抑制の働きに関しては時系列的に考えなければいけません。確かに生理学的な話をすると、AMPKの活性化によってmTORという筋肥大に必要なものを抑制してしまいます*6。ただこれはトレーニング中の話であって、トレーニング後は別で考えなくてはいけません。トレーニング中はエネルギーが絶対的に必要なので、タンパク質や脂質合成に働いている場合ではないので、これらは抑制されます。しかし、レーニング後に関してはレジスタンストレーニングを行った場合、1-2時間後からmTORが活性化し、筋肥大が始まります*7。つまり、AMPKの働きはトレーニング中のエネルギー確保のための一時的な反応であって、負荷の高い筋トレなどを行った場合これによって筋肥大が抑制されることはありません。ただし、有酸素運動行った方が筋トレよりもAMPKの分泌量は高くなり*8、筋肥大に必要なp70S6Kが低くなるため、筋肥大が抑制されてしまいます。

有酸素運動と筋トレの組み合わせに関してはこちら

dog.training-univ.com


 

 

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

 

 

参考文献

*1:Mihaylova, M. M., & Shaw, R. J. (2011). The AMPK signalling pathway coordinates cell growth, autophagy and metabolism. Nature cell biology, 13(9), 1016–1023. https://doi.org/10.1038/ncb2329

*2:Koh, H. J., Arnolds, D. E., Fujii, N., Tran, T. T., Rogers, M. J., Jessen, N., Li, Y., Liew, C. W., Ho, R. C., Hirshman, M. F., Kulkarni, R. N., Kahn, C. R., & Goodyear, L. J. (2006). Skeletal muscle-selective knockout of LKB1 increases insulin sensitivity, improves glucose homeostasis, and decreases TRB3. Molecular and cellular biology, 26(22), 8217–8227. https://doi.org/10.1128/MCB.00979-06

*3:Sakamoto, K., McCarthy, A., Smith, D., Green, K. A., Grahame Hardie, D., Ashworth, A., & Alessi, D. R. (2005). Deficiency of LKB1 in skeletal muscle prevents AMPK activation and glucose uptake during contraction. The EMBO journal, 24(10), 1810–1820. https://doi.org/10.1038/sj.emboj.7600667

*4:Koh, H. J., Brandauer, J., & Goodyear, L. J. (2008). LKB1 and AMPK and the regulation of skeletal muscle metabolism. Current opinion in clinical nutrition and metabolic care, 11(3), 227–232. https://doi.org/10.1097/MCO.0b013e3282fb7b76

*5:O'Neill H. M. (2013). AMPK and Exercise: Glucose Uptake and Insulin Sensitivity. Diabetes & metabolism journal, 37(1), 1–21. https://doi.org/10.4093/dmj.2013.37.1.1

*6:Egan, D., Kim, J., Shaw, R. J., & Guan, K. L. (2011). The autophagy initiating kinase ULK1 is regulated via opposing phosphorylation by AMPK and mTOR. Autophagy, 7(6), 643–644. https://doi.org/10.4161/auto.7.6.15123

*7:Dreyer, H. C., Fujita, S., Cadenas, J. G., Chinkes, D. L., Volpi, E., & Rasmussen, B. B. (2006). Resistance exercise increases AMPK activity and reduces 4E-BP1 phosphorylation and protein synthesis in human skeletal muscle. The Journal of physiology, 576(Pt 2), 613–624. https://doi.org/10.1113/jphysiol.2006.113175

*8:Vissing, K., McGee, S., Farup, J., Kjølhede, T., Vendelbo, M., & Jessen, N. (2013). Differentiated mTOR but not AMPK signaling after strength vs endurance exercise in training-accustomed individuals. Scandinavian journal of medicine & science in sports, 23(3), 355–366. https://doi.org/10.1111/j.1600-0838.2011.01395.x