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Adson's Test(アドソンテスト)-陽性基準・エビデンスと胸郭出口症候群の診断-

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Adson's Test(アドソンテスト)は胸郭出口症候群の診断によく用いられるテストとして有名です。しかし、そのエビデンスなどをしっかりと理解してテストを行なっている人は少ない印象です。そこで今回は、アドソンテストのエビデンス胸郭出口症候群の診断のご紹介とその他のスペシャルテストとの比較をしてみようと思います。

 

 

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は前斜角筋や中斜角筋などによって胸郭(第1肋骨と鎖骨の間のスペース)にて、神経または血管が圧迫される状態のことを指します。肩や頸部に疼痛や痺れが生じます。主な胸郭出口症候群の原因としては車での事故などの身体的外傷や、仕事・スポーツに関係する反復的な活動、解剖学的な要因(先天的に肋骨が多いなど)や妊娠などが挙げられます。しかし、医師でも胸郭出口症候群の原因が特定できないこともあります。胸郭出口症候群の治療としては理学療法と疼痛緩和療法があり、ほとんどの場合はこれで完治しますが、重症の場合手術が必要になります。

胸郭出口症候群は大きく分けて3種類あります。

 

神経性胸郭出口症候群

このタイプが最も多いタイプで、腕神経叢での圧迫がこのタイプになります。

血管系胸郭出口症候群

このタイプは動脈もしくは静脈が鎖骨下で圧迫されるタイプです。

不特定胸郭出口症候群

上記の2つに含まれない詳しい病態がわかっていないタイプで、しばしば慢性的な症状を訴える方が多いです。

胸郭出口症候群のリスクファクターとして以下が挙げられます。

[先天性]

第7頸椎にある肋骨

長い横突起

筋線維などの異常

斜角筋の起始・停止異常

[後天性]

姿勢異常

肉体労働

乳房の重さ

外傷(鎖骨・肋骨骨折など)

 

 

Adson's Test(アドソンテスト)とは?

アドソンテストの目的として、胸郭出口症候群の診断があります。また、胸郭のスペースを狭窄させ、前斜角筋や中斜角筋のタイトネスが引き起こす鎖骨下動脈の圧迫をし、動脈の流れを止める(弱める)ことによって症状を誘発するテストです。

 

方法

やり方

患者は座位または立位になり、肘関節は完全伸展位になります(開始肢位)。検側の肩関節を30°外転・完全伸展位をとります。検者は同側の手関節を把持し、橈骨動脈を触知します。患者が頚椎伸展、検側(患側)に回旋して深呼吸をしてもらいます。安静時の橈骨動脈とこの時の橈骨動脈の脈拍数・脈の強さを比較・評価します。

 

陽性基準

橈骨動脈の脈が弱くなったり脈拍数の減少が起きれば陽性。しっかりと安静時の脈と比較することが重要です。正確に検査するため健側とも比較しておく必要があります。

 

エビデンス

アドソンテスト

アドソンテストに関するエビデンスは論文によって差が激しく、信頼性のある情報が少ないということが減少です。下記にある感度・特異度に関しても論文によって感度18-87%、特異度は-94%まであったりなど、ばらつきが多いです。このばらつきが多い理由として論文によって陽性基準が異なっているというのが挙げられます。当然陽性基準が異なるので、エビデンスとしての結果は変わってきます。下記の感度・特異度が現在では示唆されていますが、この値自体がそこまで高いものではないので、このテストの有効性は低いと考えられます。ただ、今の所アドソンテストが胸郭出口症候群のテストとして最も有効であると考えられています(あくまで相対的にです)。そして、このアドソンテストだけでなく、エデンテスト・ライトテスト・ローズテスト・ティネル徴候を組み合わせることで感度が94%までに上がったという報告もあります*1

感度:79%

特異度:76%*2

感度・特異度に関してはこちら

dog.training-univ.com

 

その他のテストとの比較

上記にあるようにアドソンテストが今の所エビデンスレベルが高いとされていますが、その他のテストも比較するためにお伝えしたいと思います。アドソンテストでもお伝えしましたが、その他の胸郭出口症候群のテストでも感度・特異度のばらつきが多く、信頼性に欠けるといったところでしょうか。そのため、今の所、胸郭出口症候群の診断では複数のテストを併用するのが推奨されているのが現状です。

Wright's Test(ライトテスト)

感度・特異度共に不詳

Roos stress test(ルーズストレステスト)

感度 :84% 特異度:30% 陽性的中率:68% 陰性的中率:50%

Eden's Test(エデンテスト)

感度・特異度共に不詳

  

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参考文献

*1:Rayan G. M. (1998). Thoracic outlet syndrome. Journal of shoulder and elbow surgery7(4), 440–451. https://doi.org/10.1016/s1058-2746(98)90042-8

*2:Gillard, J., Pérez-Cousin, M., Hachulla, E., Remy, J., Hurtevent, J. F., Vinckier, L., Thévenon, A., & Duquesnoy, B. (2001). Diagnosing thoracic outlet syndrome: contribution of provocative tests, ultrasonography, electrophysiology, and helical computed tomography in 48 patients. Joint bone spine68(5), 416–424. https://doi.org/10.1016/s1297-319x(01)00298-6