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鍼灸の効果 術後の疼痛のマネージメント

                    「TEAS electronic acupuncture stimulation」の画像検索結果

今回は手術における術創部の疼痛に対する鍼灸の効果を検証した論文レビューを行います。

手術を行った患者に対して、術創部の疼痛に対して鎮痛薬を投与する場合があります。しかしながら、鎮痛薬にも副作用があるので、できれば避けたいところです。

そこで鍼灸を行うことで、その疼痛を軽減できれば、鎮痛薬の量を軽減もしくは投与しなくても良くなるかもしれません。

そこで、今回は2つの論文を読んでまとめてみました。

  1. 鍼灸によって術後の疼痛を軽減できる可能性はあるかもしれないが、あまり確定的な知見がなく、鍼灸特異的な効果は現在のところ見当たらない
  2. 鎮痛薬の服用量も軽減できるという論文もあるが、知見が別れるところで、エビデンスレベルは低いと考えられる
  3. TEASに関しては疼痛と服用量共に軽減できると示唆されており、鍼灸よりもTEASの方が良いのではないか

 

1つ目の論文は、2016年に発表されたRCT(ランダム化比較試験)を集めたメタアナリシスの論文になります。

journals.plos.org

 

内容は手術における術創部の疼痛のマネージメントについてです。

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本来、手術後に術創部の疼痛を訴える患者さんに対してはオピオイド鎮痛薬やモルヒネというものが投薬されます。ただし、この薬には当然ですが、副作用が伴います。

副作用

・眠気

・せん妄、幻覚

・呼吸抑制

・口内乾燥

・排尿障害

・ミオクローヌス などなど

 

そのため、今回の研究では鍼灸、もしくはそれに類似する治療によって、この治療をコントロールできるか実験したというわけです。

 

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対象は18歳以上の方を対象としています。

手術を行い、その後疼痛を抑制するために鍼灸治療を行った人を対象とします。

コントロール群の被験者は298名、治療を受けた被験者は384名になります。

評価方法として、術後1日目の疼痛スコアとオピオイド鎮痛薬の服用量で比較しています。

疼痛スコアはVASもしくはNRSにて評価を行っています。

また、このメタ解析は11個の論文にて構成されています。

 

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治療は手術の前もしくは後、もしくは両方にて行われ、施術を行った場所は上記の通りになります。

また、手術の場所ですが、1つの論文は腰部に統一されていましたが、このメタ解析に集められた論文では特定の部位ではなく、様々な部位にて行われています。

 

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結果ですが、鍼灸群では、オピオイド鎮痛薬の服用量は変わりありませんが、疼痛スコアが有意に減少しています。しかし、鎮痛薬の服用量を見ていただくとわかるのですが、増加している論文も見受けられ、疼痛の減少はこの投薬によって引き起こされたものの可能性もあるため、あまり鍼灸の効果は期待できそうにありません

電気鍼灸では、疼痛スコアも服用量も変化がないので、これも期待できないでしょう。

 

唯一効果が表れているのがTEASです

TEASを扱った論文は5つあり、P値も低い論文がほとんどですので、信頼性は高いという結果になっています。

疼痛スコアも服用量も減少していますので、鍼灸群のように、服用によって疼痛が軽減された可能性も低そうです。

 

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まとめると、鍼灸と電気鍼灸には術後の疼痛を抑制する効果は薄いことが考えられます。

 

一般的に鍼灸には疼痛を和らげる効果があると言われているので、今回のこの結果に関しては、術後すぐに鍼を刺すということで、心理的な面も影響しているかもしれません。

 

ここで、2つ目の論文を見て見ましょう。

Acupuncture for Acute Postoperative Pain after Back Surgery: A Systematic Review and Meta‐analysis of Randomized Controlled Trials

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/papr.12208

 

この論文は2015年の論文で、腰部の手術に限定して実験を行っています。

この論文もメタ解析を用いており、厳選された5つの論文を引用しています。

 

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これらの論文では、通常の鍼灸と、ダミー鍼灸、従来の方法(論文に詳細な記載はありませんでしたが、リハビリテーションなどと記載されておりました)と、治療を行わないという群に分けて行いました。

ダミー鍼灸に関しては、経絡と全く関係ないところに鍼を指すという方法でした。

 

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比較の方法ですが、鍼灸とそれぞれの群で効果の差を比較しています。

結果ですが、鍼灸を行うことで手術後24時間以内での疼痛の軽減が見られました。

ただ、従来の方法(鍼灸以外)との効果の差はなく、鍼灸の特異的な効果かと言われれば、少し疑問が残ります。

服用量の点でも、鍼灸とダミー鍼灸に差がなく、心理的な面や、経絡治療云々よりも鍼を刺すこと自体に効果があるのかもしれません。従来の方法とも効果の差がなく、鍼灸の効果は示しているものの、鍼灸でなければいけない理由がないといった状況です。

 

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この2つの論文をまとめると、

術後の疼痛のマネージメントに対する鍼灸は明確なエビデンスがありませんが、TEASといった代替の方法で行うことが現時点では有効であると言えるのかもしれません。

今後の期待としては、論文数だけでなく、部位ごとや手術の種類によって分類できるようになることではないかと個人的には思います。