二刀流トレーナーの海外医科学図書館

二刀流【メディカル(診断・治療・リハビリ)とストレングス(トレーニング・栄養)】に渡るジェネラリストへ

オランダのスポーツ教育 The Athletic Skills Model⑤

関連画像

続いて最後の項目です。

 

 

f:id:dogknt:20190625203830j:plain

図のように、幼少期に重点的に行うBMSに対し、成長に伴い身につけなければならないのがConditions of Movement(以下:COM)になります。スポーツ選手はゲームや、スポーツそのものだけを行なっているとトップレベルのパフォーマンスを身につけることはできません。成長に伴い、フィジカル面を徐々に考慮していく必要があります。COMが提唱するフィジカル面は以下の5つになります。

 

・Agility アジリティ

・Flexibility 柔軟性

・Stability 安定性

・Power パワー

・Endurance 持久力

 

これらの要素は決して筋の機能を意味しているのではなく、動きのことを意味しています。それでは1つずつ説明していきます。

 

Agility アジリティ

アジリティは全てのCAが対象のスポーツに適応した形で、素早く止まったり、動き出したり、方向転換したり、動きの速さを爆発的に変える能力です。動きとしては、加速減速、方向転換、ジャンプ、ジグザグに動く、着地などがあり、これらには動きをシンクロさせ、バランスを崩し、整えることを繰り返すことで行われます。知覚の移行(前の記事参照)も含めた状況判断、動きの認識、体の大きさなどが深くこの能力に関わってきます。試合をこなすだけではこの能力を向上させるには不十分ですが、試合ならではの反応や、相手に合わせた切り返しなどを身につけることができます。11-12歳がこの能力が最も向上する年齢です。

 

Flexibility 柔軟性

柔軟性はいわゆる関節の可動性(どれだけ動くか)とも言えます。これは遺伝的に決まる要素が強いですが、後天的に向上させることも可能です。この柔軟性はパフォーマンスとの関わりだけでなく、傷害の予防にも深く関わってきます。

また、この能力は種目によって求められる程度が異なります。例えば、水泳の肩甲骨周りの柔軟性、体操競技選手の開脚などです。そして、この柔軟性はstability安定性(後述)とも深く関わってきます。時にはこの柔軟性が、不安定性を招いてしまうこともあります。ただ、スプリントやキック、投げる動作におけるパワーを発揮するために柔軟性は必要になってきます。6歳までは特にこの能力に焦点を当てる必要はありませんが、様々な動きのスキルが求められてくる10歳くらいまでにはアプローチし始めて行きます。脊椎の柔軟性は15歳までは向上するので、そこまでには競技に必要な可動域を取得しておきたいものです。

ここで注意しておきたいのは、柔軟性は静的なものと、動的なものに分けられます。ご存知の方が多いとは思いますが、静的なストレッチは筋肉の緊張を落としてしまい、競技前にやることはあまり推奨されていません。一方、動的のストレッチはそのようなネガティヴな効果はなく、柔軟性の向上にもしっかりと寄与するので、一般的には動的のストレッチが多く用いられています。また、オーバーヘッドスクワットのようなもので、エクササイズ兼柔軟性向上のトレーニングなどもよく行われています。

  

Stability 安定性

安定性には十分な動きのコーディネーションが求められます。安定性は支持性、バランス、姿勢、強度といったものが必要になります。良い安定性には良いバランス能力が必要不可欠です。また、安定性は時間的なものと空間的なものが存在し、静的なものと動的なものも存在します。そして必ずしも体幹だけを指すものではありません。安定性の向上には広範囲かつ多様なコーディネーションの教育が必要になります。この教育ではいわゆる体幹レーニングのような固めるだけのトレーニングではなく、姿勢や位置を絶え間無く、新しい状況へと変えていくことが重要になります。バランス能力があっての安定性ですが、種目や動き、環境によって必要とされる安定性は異なるため、バランス能力に加え順応性(CA)も必要になります。例えば、ゴルフなどの非コンタクトスポーツでは、フォームなどの安定性が重要になってくるのに対し、コンタクトスポーツにおける安定性は相手の外力に対する安定性が重要になってきます。

 

Power パワー

パワーは筋肉の収縮の速さや力によって成り立ちます。また、物理学としても力×スピード=パワーなので、力が大きくてもスピードが低くては意味がありません。しかし、このどちらかを向上させるともう片方が落ちるというのはスポーツの世界でよく起きてしまいます。人間の成長において、成長期のピーク時にはBMSやCAに関係して発達する能力です。そして、この時期を過ぎるとCOMにとっても非常に重要な項目になってきます。このパワーを発揮するためには他の様々な能力(stability、flexibility、balanceなど)が必要になってきます。トレーニングとしてはプライオメトリックトレーニングやアジリティのトレーニングのような、遅い力から爆発的な力に変えるトレーニングを行います。スポーツそのものやスポーツ特有のトレーニングのほとんどは1RMの5-10%と言われており、スピードはかなり高いレベルなのですが、力の成分が低くなってしまいます。そのため、パワーとして計算しても高い値にはなりにくいのが現状です。そのため、補強トレーニングとして最低でも1RMの35-50%の値でトレーニングする必要があります。この割合がパワーとして計算したときに最も高い値を出すことができる負荷になります。
ここで記載されているスピードに関してですが、男子は7-10、12-16歳、女子は6-9、11-14歳に最も伸びると言われております。

 

Endurance 持久力

持久力は主にVO2maxで測定され、筋肉や内臓などのために、1分間でどれだけの酸素を体内に取り込めるかを評価します。外でよく走り回ったりなどして遊ぶ子供は持久力に特化したトレーニングをする必要はないとされています。研究においても、13歳までの子供の持久力パフォーマンスはVO2に比例するものではなく、ランニングフォームなどの技術の要素が高いとされています。プロのマラソンランナーでさえ、VO2と結果が比例するものではないと言われております。しかしながら酸素を取り込むのはスポーツでは重要な役割には変わりません。持久力は成長のピークが過ぎたあたりが最も成長すると言われています。

 

いかがでしたか?

これで一通りAthletic Skills Modelのご紹介は終わりになります。

成長期の子供へのアプローチは難しいので、少しでも参考になれば幸いです。

 

参考文献はこちらです。