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頚部痛に対する鍼灸の効果の持続性について

         「acupuncture howlong」の画像検索結果

 

今回は頚部痛に対する鍼灸の効果の持続性についての論文を読んでみたので、お伝えしたいと思います。

 

 

今回のポイント

慢性の頚部痛に対しては鍼灸が有効であるというエビデンスが多い

治療後3ヶ月を超えると鍼灸の効果は薄いと考えられる

 

 

まずは慢性期の頚部痛に対する論文です。

bmjopen.bmj.com

 

この論文はメタ分析を行った論文で、鍼灸の治療とダミー針を比較したRandomised controlled trials (RCTs)を集めて比較した論文になります。

 

続いて集めた論文の主な研究方法ですが、

被験者は3ヶ月以内に慢性的な頚部痛と診断された患者としています。

内訳は器質的な障害、変形性頚椎症、筋筋膜性頚部痛が含まれています

 

治療方法は通常の鍼灸針治療、電気鍼灸、耳介鍼灸、頭蓋鍼灸が行われ、コントロール群として、ダミー針を用いました。

 

評価方法はVisual Analogue Scale (VAS)もしくはMcGrill(MPQ)質問用紙を用いて評価しています。

 

結果ですが、どの論文においても鍼灸治療によるVASやMPQの有意な減少がみられました

 

筆者は鍼灸の慢性期における頚部痛に対する効果を示唆しております。

 

以上簡単に慢性期の頚部痛に対する鍼灸の効果を研究した論文についてお伝えしました。上記の論文のように頚部痛に限らず、慢性期の疼痛に対しては鍼灸の効果を示唆している論文はすでに多くみられます。

 

しかし、鍼灸の治療効果がどのくらい続くのかが不明瞭であるのが現状です。

そこでもう1つ鍼灸の持続性について調査したものがあるので、お伝えしたいと思います。

 

journals.plos.org

 

この論文もメタ分析の論文で、頚部痛と腰部痛に対する鍼灸の持続性をみた論文になっております。

 

方法ですが、全体で658本の論文を調査し、最終的に75本の論文に絞り込みました。絞り込みの方法ですが、以下の条件にて論文を絞り込みました。

 

  1. ランダム化試験を行っているかどうか

  2. 治療方法は被験者に開示しないで行ったか(どの群かを被験者に知らせない)

  3. 被験者グループは最も重要な予後指標を表すベースラインに類似していたか

  4. 患者は介入に対してブラインドの状態で行ったか(どの治療方法を用いたかを非公開)

  5. 実験者は治療方法に対してブラインドの状態で行ったか

  6. 複数の介入を行なってないか

  7. カウントしなかった被験者の詳細をしっかりと開示しているか

  8. 各論文の結果を評価するタイミングが類似していたか

  9. 介入は治療を見越してのものであるか

  10. 各論文の結果は選択的に選んだものではないか

 

患者は17-90歳の頚部痛もしくは腰部痛を持っている合計11077名の患者です。

その中から急性期(診断後1ヶ月以内)、準急性期(1−3ヶ月後)、準慢性期(3−12ヶ月後)、慢性期(1年以上)の群にわけました。また、介入(治療)後1週間以内、3ヶ月以内、3−12ヶ月以内、12ヶ月以上

 

治療方法は通常の鍼灸、TENS、あん摩マッサージ、カッピング、中国式の運動療法を行っていました。コントロール群としてはダミー針を用いた鍼灸としています。

評価方法はVisual Analogue Scale (VAS)を用いて点数化しています。

 

この記事では鍼灸の部分にのみ焦点を当ててお伝えして行こうと思います。

鍼灸治療はダミー針による鍼灸と比べて急性期の被験者ではMD=-0.58(I2=46.3%)となっています。また、他の論文では準急性期での比較でMD=-0.72となっています。準慢性期以降では両者で差がなかったMD=-0.32(-0.68~0.04)ようです。

 

このことから、急性期と準急世期、つまり治療後3ヶ月以内は鍼灸の効果が持続するが、それを超えると両者に差がなくなってきていることがわかります。

 

ただ、急性期でのばらつきがI2=46.3%を示しており、統計学的なばらつきは認めないものの、そこまで信頼性が高くなく、人によるばらつきが大きいのではないかというのが個人的な意見です。

 

いかがでしたか?
鍼灸治療は遅かれ早かれ、治療の効果は薄まってきてしまうのが現状のようです。そのため、運動療法や習慣の改善など、持続できるものをプラスして鍼灸の効果をより高めることが重要だと思います。

腰部のスペシャルテスト集③

        「lumbar spine」の画像検索結果

 続いて腰部のスペシャルテスト第三弾です。

 

Sacroiliac Joint Posterior Gapping Test / Thigh Thrust Provocation Test 仙腸関節離開テスト/大腿誘発テスト「Sacroiliac Joint Posterior Gapping Test / Thigh Thrust Provocation」の画像検索結果

「cluster van der wurff assessment」の画像検索結果

目的:仙腸関節を離開し、疼痛の誘発を確認する

患者の開始姿勢:背臥位で頭を枕に乗せる

セラピストの開始姿勢:セラピストは患者の隣に立つ(検側と反対側)

セラピストの手:【離開テスト】患者に対して尾側の手、特に示指と中指で自分が立っている反対側(検側)のPSISの内側を触知する。頭側の手は、膝を支える。【誘発テスト】離開テストと違い、PSISを触診しない代わりに両手で膝を支える。

動作:【離開テスト】股関節を他動にて90°屈曲させ、そこから内転させる。その時点で反対側の手はしっかりとPSISを触診できているかを確認する。その後股関節をさらに屈曲内転方向に持っていく(反対側の肩に向かって)。この時疼痛の有無と仙腸関節の離開の有無を確認する。(上図)【誘発テスト】股関節の屈曲内転する姿勢は離開テストと同じ。そこから、両手で股関節を大腿骨軸上に圧迫をする。(下図)

陽性:仙腸関節が離開し、仙腸関節での疼痛が誘発できたら陽性

Note:-

カッパ係数:0.88

Sensitivity 感度:36%

Specificity 特異度:50%

 

 

Gaenslen’s Provocation Sacroiliac Joint Test「gaenslen test」の画像検索結果

目的:疼痛を誘発し、仙腸関節の反応性を評価する

患者の開始姿勢:背臥位で頭を枕に乗せる

セラピストの開始姿勢:セラピストは患者の隣に立つ

セラピストの手:検側の膝を支える

動作:片側の股関節を最大限他動にて屈曲させる。この時浮いてくる反対側の下肢は伸ばしたままで抑える。もし患者の股関節屈曲の可動域が大きく、反対側の下肢が浮いて来ない場合はベッドの端に寄り、片側の下肢をベッドから出し、股関節を他動にて伸展する。

陽性:仙腸関節付近に疼痛が誘発したら陽性

Note:疼痛の原因としては同側の仙腸関節、股関節の病変、L4神経根の障害によって生じる。

カッパ係数:0.72

Sensitivity 感度:71-77%

Specificity 特異度:26-50%

 

 

Sacral Thrust Provocation Sacroiliac Joint Test「Sacral Thrust Provocation Sacroiliac Joint Test」の画像検索結果

目的:疼痛を誘発し、仙腸関節の反応性を評価する

患者の開始姿勢:腹臥位で骨盤の下に枕を入れる

セラピストの開始姿勢:セラピストは患者の隣に立つ(どちら側でも良い)

セラピストの手:どちらか一側の手根骨〜手掌で仙骨に起き、もう片方の手で支持する。

動作:置いてある手で、仙骨を尾前方に約10秒かけて押していく

陽性:仙腸関節付近に疼痛が誘発したら陽性

Note:患者の服装によってこのテストの信頼性が大きく変わってくる。

カッパ係数:0.56

Sensitivity 感度:-%

Specificity 特異度:-%

 

 

Flexion, Abduction, and External Rotation (Patrick or FABER) Test パトリックテスト「patrick Test」の画像検索結果

目的:このテストは仙腸関節のモビリティをチェックするためだけでなく、股関節のモビリティも評価する

患者の開始姿勢:背臥位にて非検側の下肢は伸ばしたまま、検側の下肢はあぐらを描くように股関節を屈曲外転外旋させて、非検側の膝に下腿がくるようにする。

セラピストの開始姿勢:患者の隣に立つ

セラピストの手:一側の手は非検側のASISに、もう一側の手は検側の膝内側に当てる

動作:膝に置いてある手で検側の膝を地面方向に押していく

陽性:臀部(仙腸関節付近)またはグローインの部分に疼痛が誘発されれば陽性

Note:左右差で柔軟性の差を比較することが重要である。また、下腿と水平線がなす角度で、検査肢位での外旋角度を測定し、60°以下であれば股関節関節炎の可能性を示唆する(下記の感度、特異度はその率を示す)。

カッパ係数:0.62

Sensitivity 感度:57%

Specificity 特異度:18-71%(論文によって幅が広いため、参考にならない可能性が高い)

 

急性期の足関節捻挫への介入

「ankle sprain」の画像検索結果

 

足関節の捻挫はよくスポーツの現場で起きてしまいます。慢性化しやすい傷害の1つで、中々治療するにも難しいというのが現状です。

病院のスタッフの方や、現場のトレーナーの方で徒手療法や、物理療法を行う方もいるのではないでしょうか?そこで、現時点での急性期の足関節捻挫に対する介入の効果について情報を集めて見ました。

 

まとめ
急性期における運動療法と装具療法は再受傷の予防に対して強いエビデンスが見られた
急性期での超音波は有効とは言えなかった
急性期における手術の効果に対しては議論の余地がある

 

 

 

はじめに

今回ご紹介する論文はこちらです。

bjsm.bmj.com

急性期の足関節捻挫に対する治療方法を評価した論文になっています。この論文はメタ分析を行った論文で、各治療(下記)における効果を評価しています

 

治療の内容ですが、まずは手術をしたか否かで論文がわかれます。手術をしていない群はさらに運動療法徒手療法、物理療法、テーピングや装具療法、鍼灸、薬を行った論文がありました。

 

各治療の評価方法ですが、論文によって異なりますが、基本的には再受傷をしたな否かです。その他にも、疼痛、腫脹、機能などを測定している論文もありました。

 

そして論文のスクリーニングですが、まずは最初に2506本もの論文を査定しました。その中から、46本もの論文に絞り、まとめています。

絞り込んだ条件として、

1)システマティックレビューであり、様々な論文によって構成されていること

2)足関節捻挫もしくはCAIの治療に対して評価をしているもの

3)AMSTER 法を用いた治療に対するバイアスの評価で7点以上

のものを条件としています。

 

それでは各治療方法における結果をお伝えしたいと思います。

 

手術

6つの論文にて評価したところ、これらの論文のいずれも突出した手術の効果は示すものはなく、保存療法との差は明確なものではないことがわかりました。筆者も急性期においては、すぐに手術を行うべきではなく、保存療法をまず行い、症状が長期間続く場合のみ行うべきだと述べています。

 

運動療法

18本の論文を評価したところ、運動療法自己評価による機能が改善したという報告が多く(10本)ありました。また、3つの論文において運動療法によって足関節捻挫の再受傷を予防できたというものでした。筆者も運動療法は再受傷の予防には強いエビデンスがあると述べています。運動療法の種類はバランストレーニングや、PNFトレーニング、神経筋トレーニングなどを行いました。論文によっては徒手療法と組み合わせて行っている論文もありました(そのため論文の合計数が合わないです)。

 

徒手療法

18本の論文を評価したところ、徒手療法が足関節捻挫の再受傷の予防に効果的だとはっきりと明言している論文はなく、筆者もまだ議論の余地があると述べています。というのも、短期間でも効果でいうと、徒手療法直後は足関節背屈のROMが向上しましたが、それが再発予防に関与しているか不明ですし、長期的な効果は得られなかったからです。徒手療法について、*1という論文においても、足関節背屈ROMの向上は短期的に見られるものの、長期的なものは見られないとしています。

 

物理療法

6本の論文を評価したところ、アイシングと圧迫については足関節捻挫の予防また自己評価における機能の改善に対しては効果は見られなかったとしています。また、超音波療法においても効果は見られなかったとのことです。

 

テーピングと装具療法

6つの論文を評価し、6本ともテーピングと装具療法には足関節捻挫の予防、そして自己評価における機能を改善するとしています。

 

鍼灸

3本の論文を評価したところ、鍼灸は足関節捻挫の予防に効果的なものは見られませんでした。

 

3本の論文を評価したところ、薬においても足関節捻挫の予防に効果的とされる論文は見当たりませんでした。

 

 

今の所モビライゼーションやリラクゼーション効果のある治療は再発予防に対してあまり効果的ではないようです。ただ、リハビリ中など、目的に応じて使い分けていく必要があるかもしれないというのが個人的な見解です。

*1:Ishanka Weerasekara el(2018);Clinical Benefits of Joint Mobilization on Ankle Sprains: A Systematic Review and Meta-Analysis

ビタミンKのはたらき

「vitamin K」の画像検索結果

 

ビタミンKとは聞いたことがあるでしょうか?
なかなか日常生活ではあまり聞きませんが、骨や病気の予防に対してとても重要な栄養素の1つなんです。

ここではビタミンKについてお伝えしていきたいと思います。

 

まとめ
・ビタミンKにはK1とK2がある
骨粗鬆症に起因する骨折を予防する効果がある
・肝臓癌の予防、インスリンの機能を改善する効果がある
・K2には心臓血管病のリスクを軽減する効果がある
・1日の摂取目安量は、女性で90μg、男性で120μg

 

 

 

ビタミンKとは

ビタミンKは脂溶性の(fat-soluble)ビタミンで、体内にある多数のタンパク質に対して重要な役割を担っています。具体的にいうと、凝固作用のあるタンパク質Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ、C、Sや、骨芽細胞が分泌するオステオカルシン(骨形成に関わるタンパク質)、matrix-Gla(MGP)(人工タンパク質)などになります。ビタミンKは天然にはビタミンK1(正式名称:フィロキノンphylloquinone)とK2(正式名称:メナキノンmenaquinone、MK4-!0まで存在)が存在します。前者は緑葉野菜、オリーブオイル、大豆油などに含まれています。後者は鶏肉、バター、卵黄、チーズ、発酵した豆(納豆など)などに少量含まれております。両方共、全てのビタミンK依存性タンパク質のγグルタミルのカルボキシル化(carboxylation)に必要になってきます。哺乳類の腸内細菌フローラではビタミンK2を産生できるが、少量であると考えられています。1日の摂取目安量は、女性で90μg、男性で120μgとなっているが、この量では、ビタミンK依存性タンパク質の全てをカルボキシル化するには量が足りません。

 

ビタミンK欠乏症

血液検査に基づいた測定や治療は完璧ではありません。フィロキノンの数値が側近の食事によって変動するからです。低カルボキシル化オステオカルシンの割合もビタミンKの状態を表していますが、これも食事などによって変動してしまうので、慢性的な状態を測定することは難しいです。

不足すると、骨折のリスクが高くなったり、動脈に悪影響を与えます

 

 

ビタミンKと健康

アメリカのUSPSTFはカルシウムやビタミンDの摂取が骨粗鬆症に起因する骨折を予防するエビデンスは十分ではないと主張しています。そのため、更年期の女性などにカルシウムやビタミンDの処方は第1選択にはならないそうです。反対に、最近はビタミンKの骨折予防の効果が注目されています。研究では、ランダム化試験(投与群とコントロール群)にてビタミンK1を5mg/日を440人の閉経後の女性を対象にした研究では50%以上の骨折をした人数が異なったという報告もありますその他にも血管石灰化、肝臓癌(HCC)、インスリン感受性も改善するのではないかという報告も増えてきています。

ビタミンK2を摂取すると、心臓血管の石灰化を遅延させることで心臓血管病のリスクが軽減すると言われております。ただし、ビタミンK1のみでK2がないと効果は期待できないとされています。心臓血管に対してはビタミンK2の方が効果がありそうです。また、ビタミンKは血管の弾性の劣化を遅らせる効果もあります。

γカルボキシグルタミン酸を含んだタンパク質(MGP)とオステオカルシンは抗石灰化と骨合成を調節します。そのため、ビタミンKが不足すると、オステオカルシンの活動(骨合成など)と、骨芽細胞(osteoblast)の働きを阻害してしまいます。

 

いかがでしたか?
少し難しい単語が並びましたが、重要なはたらきがあるんだということを覚えていただければと思います。

 

以下が参考にした論文です。

openheart.bmj.com

腰部のスペシャルテスト集②

          「lumbar spine」の画像検索結果

 続いて腰部のスペシャルテスト第二弾です。

 

Prone Hip Extension Neuromuscular Control Test  腹臥位股関節伸展における神経筋コントロールテスト

f:id:dogknt:20190716034658p:plain

目的:自動での股関節伸展中の腰仙部安定性の強度、コントロールを評価

患者の開始姿勢:腹臥位、下腹部にクッション等を入れ、腰椎が中間位になるようにする。

セラピストの開始姿勢:患者の左右のどちらかに立つ

セラピストの手:腰部の筋を触診する

動作:患者は自動にて片側の股関節をテーブルから8-10インチ挙げる(股関節伸展)。この時、腰椎の中間位を保持しているか、また、同側の大臀筋/ハムストリングス、反対側の多裂筋、同側の多裂筋、反対側の脊柱起立筋、同側の脊柱起立筋の順番に収縮しているかチェックする。

陽性:動作中に疼痛が再現したら陽性。腰椎の中間位が保てない場合もある。

Note:腰仙部の安定性の低下が見られたら、脊柱起立筋が優位であったり、多裂筋が遅れて収縮もしくは収縮が不十分だったりする。また、大臀筋の収縮の遅延もしくは不十分な収縮、股関節伸展の角度不足、骨盤の前面が浮いたり、腰椎が過度に前彎したりする代償動作、腰椎の椎体内の圧の増加はよく見られる。トレーニングにより多裂筋の機能が改善した場合、この疼痛や代償動作は改善される。

このテストにおいて、慢性の腰痛を持っている人は以下の3つのうち1つは当てはまる可能性が高いという報告がある。

1:棘突起が同側に動く(体幹の回旋)

2:腰椎が同側に側方移動する(側屈)

3:腰椎の伸展

カッパ係数:0.72-0.76

Sensitivity 感度:-%

Specificity 特異度:-%

  

Trendelenburg Test  トレンデレンブルグテスト

f:id:dogknt:20190716034759p:plain

目的:片脚立位時の中臀筋の機能に着目した、股関節、骨盤、体幹の神経筋コントロールを評価

患者の開始姿勢:立位

セラピストの開始姿勢:患者の後方に立つ

セラピストの手:触診は不要

動作:検側と反対側の股関節を30°屈曲する。この時、腸骨稜と地面に対して垂直な線がなす角度を観察する。

陽性:片側の下肢を挙上した時に検側と反対側の骨盤が挙上もしくは高さが変わらず、その姿勢を30秒間保持できたら正常。保持できない、もしくは検側と反対側の骨盤が大きく下制したり、立脚側の股関節が大きく内転したら陽性。

Note:-

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:-%

Specificity 特異度:-%

 

Hip Abductor Neuromuscular Control Test  股関節外転テスト

f:id:dogknt:20190716035250p:plain

目的:股関節外転の筋力、収縮パターン、コントロール、腰仙部の安定性を評価

患者の開始姿勢:検側を上にした側臥位になり、下の股・膝関節は30°屈曲、上の下肢は体幹と一直線になる

セラピストの開始姿勢:患者の後方に立つ

セラピストの手:(負荷をかける時)患者から見て尾側の手を下腿遠位に置く

動作:上の下肢を体幹と一直線にしたままテーブルから24インチ挙上する。この際挙上する下肢が体幹との一直線を保ったまま挙上できるかを観察する。

陽性:挙上する際、挙上位で保持できなかったり、同側の股関節が屈曲すると陽性。

Note:このテストで陽性の場合は、中臀筋の筋力低下もしくは大腿筋膜張筋優位、腸脛靭帯のタイトネスが考えられる。中臀筋の筋力テストを行いたい場合は、股関節を35°外転、10°伸展、10°外旋位で徒手にて抵抗をかける。

カッパ係数:-

Sensitivity 感度:72%

Specificity 特異度:46% ※これらの割合は中臀筋損傷に対して

 

Gillet Marching Test  ギレットマーチングテスト

f:id:dogknt:20190716035356p:plain

目的:仙腸関節の可動性(mobility)を評価

患者の開始姿勢:立位もしくはベッド上に座位(足は浮かせる)

セラピストの開始姿勢:患者の後ろで膝立ちもしくは低い椅子に座位、この時セラピストの目線は患者のPSISに来るように

セラピストの手:片方の母指を検側のPSIS、もう片方をS1に置く

動作:患者は自動にて検側の股関節をできるだけ屈曲する。この時検側のPSISが股関節屈曲にしたがって尾側に移動するかを観察。

動作(別法):両母指を両PSISに置き、片方ずつ股関節を屈曲してもらい、PSISの移動量を左右で比較する。

陽性:股関節屈曲の際、PSISが尾側に移動しなければ陽性

Note:評価する際、まず患者が片脚立位を維持できるバランス能力があるかを評価する(トレンデレンブルグなど)。もしバランスを保つことができなければベッドなどに座り行う。

カッパ係数:0.59

Sensitivity 感度:43%

Specificity 特異度:68% ※腰痛(仙腸関節に麻薬ブロックを使用している患者)に関して

  

Distraction Provocation (Anterior Superior Iliac Spine Gap) Sacroiliac Joint Test  ASIS離開テストf:id:dogknt:20190716035637p:plain

目的:仙腸関節の反応のレベル(緩さなど)の評価

患者の開始姿勢:背臥位

セラピストの開始姿勢:患者の左右のどちらか

セラピストの手:腕をクロスして、手掌で患者の両ASISに置く

動作:ASISを後外方に約10秒間かけて徐々に強く推していく。もしこの状態で疼痛がなければ、エンドポイントで軽い負荷をかける。

陽性:仙腸関節や恥骨結合のあたりに疼痛が誘発したら陽性

Note:-

カッパ係数:0.69

Sensitivity 感度:-%

Specificity 特異度:-%

 

Anterior Superior Iliac Spine Compression Provocation Sacroiliac Joint Test  ASIS圧迫テスト

f:id:dogknt:20190716040027p:plain   f:id:dogknt:20190716040038p:plain


目的:仙腸関節痛を誘発し、仙腸関節の反応性を評価するため

患者の開始姿勢:背臥位で頭を枕に乗せる

セラピストの開始姿勢:患者の横に立つ

セラピストの手:両手で両ASISを抑える。このとき、手掌がASISを包むようにする。

動作:抑えてある両手で、ASISを徐々に真ん中に向かって推していく。目安として、10秒かけて徐々に強く推していく。このときに疼痛が誘発されなければ、最終ポイントのところでやや衝撃を与え、再度疼痛が誘発されるか確認する。

陽性:このとき仙腸関節痛が誘発されれば陽性。ただし、推しているところが痛む場合は陽性ではない。

Note:このテストの別法(下図)として、患者が側臥位した状態で側方よりASISを圧迫して評価することも可能。

カッパ係数:0.73

Sensitivity 感度:70%

Specificity 特異度:90%

 

次の記事はこちら

dog.training-univ.com

オランダのスポーツ教育 The Athletic Skills Model⑤

関連画像

続いて最後の項目です。

 

 

f:id:dogknt:20190625203830j:plain

図のように、幼少期に重点的に行うBMSに対し、成長に伴い身につけなければならないのがConditions of Movement(以下:COM)になります。スポーツ選手はゲームや、スポーツそのものだけを行なっているとトップレベルのパフォーマンスを身につけることはできません。成長に伴い、フィジカル面を徐々に考慮していく必要があります。COMが提唱するフィジカル面は以下の5つになります。

 

・Agility アジリティ

・Flexibility 柔軟性

・Stability 安定性

・Power パワー

・Endurance 持久力

 

これらの要素は決して筋の機能を意味しているのではなく、動きのことを意味しています。それでは1つずつ説明していきます。

 

Agility アジリティ

アジリティは全てのCAが対象のスポーツに適応した形で、素早く止まったり、動き出したり、方向転換したり、動きの速さを爆発的に変える能力です。動きとしては、加速減速、方向転換、ジャンプ、ジグザグに動く、着地などがあり、これらには動きをシンクロさせ、バランスを崩し、整えることを繰り返すことで行われます。知覚の移行(前の記事参照)も含めた状況判断、動きの認識、体の大きさなどが深くこの能力に関わってきます。試合をこなすだけではこの能力を向上させるには不十分ですが、試合ならではの反応や、相手に合わせた切り返しなどを身につけることができます。11-12歳がこの能力が最も向上する年齢です。

 

Flexibility 柔軟性

柔軟性はいわゆる関節の可動性(どれだけ動くか)とも言えます。これは遺伝的に決まる要素が強いですが、後天的に向上させることも可能です。この柔軟性はパフォーマンスとの関わりだけでなく、傷害の予防にも深く関わってきます。

また、この能力は種目によって求められる程度が異なります。例えば、水泳の肩甲骨周りの柔軟性、体操競技選手の開脚などです。そして、この柔軟性はstability安定性(後述)とも深く関わってきます。時にはこの柔軟性が、不安定性を招いてしまうこともあります。ただ、スプリントやキック、投げる動作におけるパワーを発揮するために柔軟性は必要になってきます。6歳までは特にこの能力に焦点を当てる必要はありませんが、様々な動きのスキルが求められてくる10歳くらいまでにはアプローチし始めて行きます。脊椎の柔軟性は15歳までは向上するので、そこまでには競技に必要な可動域を取得しておきたいものです。

ここで注意しておきたいのは、柔軟性は静的なものと、動的なものに分けられます。ご存知の方が多いとは思いますが、静的なストレッチは筋肉の緊張を落としてしまい、競技前にやることはあまり推奨されていません。一方、動的のストレッチはそのようなネガティヴな効果はなく、柔軟性の向上にもしっかりと寄与するので、一般的には動的のストレッチが多く用いられています。また、オーバーヘッドスクワットのようなもので、エクササイズ兼柔軟性向上のトレーニングなどもよく行われています。

  

Stability 安定性

安定性には十分な動きのコーディネーションが求められます。安定性は支持性、バランス、姿勢、強度といったものが必要になります。良い安定性には良いバランス能力が必要不可欠です。また、安定性は時間的なものと空間的なものが存在し、静的なものと動的なものも存在します。そして必ずしも体幹だけを指すものではありません。安定性の向上には広範囲かつ多様なコーディネーションの教育が必要になります。この教育ではいわゆる体幹レーニングのような固めるだけのトレーニングではなく、姿勢や位置を絶え間無く、新しい状況へと変えていくことが重要になります。バランス能力があっての安定性ですが、種目や動き、環境によって必要とされる安定性は異なるため、バランス能力に加え順応性(CA)も必要になります。例えば、ゴルフなどの非コンタクトスポーツでは、フォームなどの安定性が重要になってくるのに対し、コンタクトスポーツにおける安定性は相手の外力に対する安定性が重要になってきます。

 

Power パワー

パワーは筋肉の収縮の速さや力によって成り立ちます。また、物理学としても力×スピード=パワーなので、力が大きくてもスピードが低くては意味がありません。しかし、このどちらかを向上させるともう片方が落ちるというのはスポーツの世界でよく起きてしまいます。人間の成長において、成長期のピーク時にはBMSやCAに関係して発達する能力です。そして、この時期を過ぎるとCOMにとっても非常に重要な項目になってきます。このパワーを発揮するためには他の様々な能力(stability、flexibility、balanceなど)が必要になってきます。トレーニングとしてはプライオメトリックトレーニングやアジリティのトレーニングのような、遅い力から爆発的な力に変えるトレーニングを行います。スポーツそのものやスポーツ特有のトレーニングのほとんどは1RMの5-10%と言われており、スピードはかなり高いレベルなのですが、力の成分が低くなってしまいます。そのため、パワーとして計算しても高い値にはなりにくいのが現状です。そのため、補強トレーニングとして最低でも1RMの35-50%の値でトレーニングする必要があります。この割合がパワーとして計算したときに最も高い値を出すことができる負荷になります。
ここで記載されているスピードに関してですが、男子は7-10、12-16歳、女子は6-9、11-14歳に最も伸びると言われております。

 

Endurance 持久力

持久力は主にVO2maxで測定され、筋肉や内臓などのために、1分間でどれだけの酸素を体内に取り込めるかを評価します。外でよく走り回ったりなどして遊ぶ子供は持久力に特化したトレーニングをする必要はないとされています。研究においても、13歳までの子供の持久力パフォーマンスはVO2に比例するものではなく、ランニングフォームなどの技術の要素が高いとされています。プロのマラソンランナーでさえ、VO2と結果が比例するものではないと言われております。しかしながら酸素を取り込むのはスポーツでは重要な役割には変わりません。持久力は成長のピークが過ぎたあたりが最も成長すると言われています。

 

いかがでしたか?

これで一通りAthletic Skills Modelのご紹介は終わりになります。

成長期の子供へのアプローチは難しいので、少しでも参考になれば幸いです。

 

参考文献はこちらです。

 

オランダのスポーツ教育 The Athletic Skills Model④

「the athletic skills model」の画像検索結果

今回はASMの2つ目の項目、Coordinative Abilities(以下:CA)についてお伝えしていきます。

 

コーディネーションとは動きをコントロールし、協調させるために必要な能力です。この能力は6〜13歳までが最も向上すると言われております。特に成長期では、腕や足の長さと体幹の長さのバランスが著しく変わるため、この能力がネガティヴな方に傾いてしまうことは少なくありません。ASMではCAを以下の7つに分類しています。

 

Coordinative Abilities (CA)

・Adaptability(順応性)

・the ability of maintain balance(バランス能力)

・the coupling ability (synchronization of movement)(動きの時間的一致)

・the kinetic differentiating ability(運動学的区別能力)

・spatial orientation ability(空間認識)

・the ability to react(反応能力)

・rhythmic ability(リズム能力)

 

f:id:dogknt:20190517211930j:plain

CAはBMSとこのような関係にあり、CAはトレーニングの方法またはメニューを変える時期において、観察や動きの評価をするために用いられます。

 

Adaptability(順応性)

ASMにおいて、順応性は主な発達要素の1つです。この能力は年齢を問わず大切なもので、向上することが可能です。しかし幼少期の方が会得しやすいと言われています。また、バランス能力と深く関係しています。スポーツや動きにおいて、様々な環境に対応するためにこの能力が必要になってきます。また、ASMでは様々なトレーニングをすることによってこの能力を向上させることができると言われております。目指すべきゴールは同じでも、環境や負荷などが変わることが重要になります。例えば、テニスにおいて、コートが芝であっても、クレイであっても同じパフォーマンスを発揮するということになります。反復練習を繰り返すことも大事ですが、反復練習のみを行っていくと、この能力が向上することはありません。また、日本で大活躍していた選手が海外に試合に行ったり、海外に移籍した途端に活躍できなくなるのは、気候やプレースタイルなどに順応できなかったことが考えられます。技術の適応トレーニング(前の記事参照)ではこの能力の向上を狙っているとも言えます。

 

the ability of maintain balance(バランス能力)

この能力はASMにおいて、成長する過程で継続的に(最初から最後まで)関わる要素になります。男子では10-11歳、女子では9-10歳が最も成長する時期になります。この能力は男女ともに12-14歳で成熟すると言われています*1 。また、様々なスポーツや活動をすることが重要になってきます。様々なスポーツをすることで、様々な床や地面の上で、滑ることや走ること、転がること、着地することなど様々な動きが含まれるからです。また、バランスを崩す能力も必要とされています。バランスを崩す能力というのは、バランスを崩した時、しっかりと転べるか、転んですぐ起きれるか、立て直せるかという能力になります。競技者はバランスを崩すことに対し恐怖心を抱いてしまってはパフォーマンスが十分に発揮できません。バスケットボール、サッカー、アメリカンフットボールなどでは、何度も転んでる暇はありません。転んだとしてもすぐに立ち直り、しっかりと自分のポジションや陣地に行かなければなりません。そのため、競技者は転び方を知っている必要があります。

 

synchronization of movement(動きの時間的一致)

この能力は動きを効率的にシンクロさせたり、スムーズな動きをするために異なる体の部分を協調させる能力になります。6-8歳が男女ともにこの能力が最も向上する年齢になります。これは運動学的区別能力、バランス能力、アジリティ能力と深く関係しています。動きがぎこちない選手はこの能力が低い可能性があります。例えば、サッカーばかりやっている子供は上半身の発達があまりなく、足はうまく使えるのですが、腕があまり使えないという状況になります。しかし、サッカーであっても上のレベルになれば、上半身や腕の使い方も重要になってきます。そのため、幼少期には身体的な面において、偏った体の一部を酷使するのではなく、体全身をくまなく使えるようにトレーニングしていく必要があります。また、動きとしても、押すことが多いスポーツばかりをやるのではなく、引くことが多いスポーツをやったりなど、色々な体の部位、色々な動作をする事がこの能力を向上するために重要になってきます。

 

the kinetic differentiating ability(運動学的区別能力)

この能力は動きの力具合、距離(どれだけ動かすか)、タイミング、スピード、を調節する能力です。例えば、テニスやバレーボールでどのくらい奥に打ち込むか、ゴルフでどのくらい強く打つかなどの能力になります。また、程度の調節するという意味で、ボールを受け、コントロールすることもこの能力で、ボールの衝撃を素手や道具などで吸収するときに必要な能力です。この能力は動きをどれだけ正確に、効率よくできるかという能力なので、全てのCAに関係してきます。男女ともに6-7歳、10-11歳が最も向上する年齢になります。

 

spatial orientation ability(空間認識)

空間認識は環境において、対象の物体や人間、地面と関係して、姿勢や体の方向などを維持するために必要な能力です。また、対戦相手や道具、チームメイトと適切な距離を取る能力でもあります。特に自分の目で実際に見ているものよりも広い視野(実際には見えてないが、感じる能力)が必要なコンタクトスポーツではこの能力は重要になってきます。12歳前後が最もこの能力が向上する年齢だということになります。

  

the ability to react(反応能力)

反応能力は早く、そして適切な判断や行動に関係し、この能力は見ること、聞くこと、感じることで行われます。日々の練習の中で、予想できるものとできないものに対して反応することで向上することができます。ほとんどのスポーツでは、特に試合やゲームで相手の動きやフェイントなどに対して反応する必要があります。9-10歳が男女ともに最もこの能力が向上する年齢になります。

  

rhythmic ability(リズム能力)

動きのリズムというのは動きにおいて、適切なタイミングで力を入れたり抜いたりすることを言います。この能力は見たり音を聞いたりすることで行われます。次の姿勢にうつるためには必要な能力なので、アジリティと深く関係しています。ダンスやスポーツそのものをやることで身についていきます。音楽に合わせて動かすことはBMSの1つでもあります。しかし、楽器を演奏したり、音楽に関わることがこの能力を向上させるという科学的根拠はありません。ただし、雑音の中でもしっかりとパフォーマンスを発揮できるようになることは言われており、楽器の演奏は年齢問わず推奨されております。男子は10歳、女子は9歳でこの能力が最も向上すると言われております。

 

ここまでがCAになります。

次の記事ではCOMについてお伝えできればと思います。

dog.training-univ.com

 

以下が参考文献になります。

 

*1:Protovasa M. (1984); Train for Balance