二刀流トレーナーの海外医科学図書館

二刀流【メディカル(診断・治療・リハビリ)とストレングス(トレーニング・栄養)】に渡るジェネラリストへ

足底筋膜炎に対する鍼灸治療 -治療の効果とエビデンス-

f:id:dogknt:20200329005724j:plain

陸上選手をはじめ、スポーツ選手に多い足底筋膜炎。病院や整骨院に行っても中々治らないということもよく聞くくらい、メディカルサイドからしても厄介ですよね。その中で足底腱膜炎の治療として鍼灸治療に通われる方もいるのではないでしょうか。そこで今回は実際に足底筋膜炎に対して鍼灸がどのくらい効果があるのか、最新のエビデンスをお伝えしたいと思います。 

  1. 短期間(4-8週間)では従来の治療よりも鍼灸の方が有意に疼痛が軽減した
  2. 長期間で見ると、鍼灸治療と従来の治療との差は見られなかった
  3. 鍼灸の他に推奨される治療方法はあるが、まだまだエビデンスとしては弱い

 

足底筋膜炎とは?

足底には、足底筋膜と呼ばれる、筋膜が、踵骨から足指の基部まで走行しています。足背の骨は、弓状(アーチ)になって体重を支えているが、アーチを弓の弦のようにピンと張って支えるという役割があります。足底腱膜炎とはその名の通り、踵から足趾にかけて走行している腱組織および筋膜・足底筋膜に炎症が起きることで、ほとんどの場合、足底の部分から踵かけて疼痛が出現します。要因としては、オーバートレーニングなどの過負荷や加齢などによって足底筋膜に炎症を起こすことや、扁平足をはじめとする姿勢不良と言われています。ただし近年、足底筋膜の炎症が必ずしも生じるわけではなく、Plantar Heel Pain(足底踵痛)の方が良いのではと提案している報告*1もあります。

 

 

現在における足底筋膜炎の治療

恐らく、典型的な足底筋膜炎の治療といえば足底筋膜自体のモビライゼーションや周囲組織との癒着を剥がすようなアプローチが主流だと思います。しかし、実際に徒手療法などを行なってどのくらいこの足底筋膜の組織が変化したのかというと、わずか1%しか組織の変化は起こりません*2。もちろんこの1%の変化によって人によっては症状が改善する人もいるでしょう。ただ、足底筋膜のモビライゼーションが第1選択肢として行われるのはエビデンスの観点からするとあまり良い選択肢とは言えないかもしれません。

 

 

鍼灸治療の効果とエビデンス

それでは鍼灸治療がどれくらい足底筋膜炎に効果があるのか最新の情報を見てみましょう

 

鍼灸治療のエビデンス

研究デザイン①

足底筋膜炎の患者を対象としたランダムコントロール試験(RCTs)を集めたメタ分析によると、3つの鍼灸と一般的な治療(ストレッチ、トレーニング、アイシングなど)を比較した論文、1つの鍼灸とダミー鍼灸を比較した論文が抽出されました。これらの論文ではヴィジュアルアナログスケール(VAS)と足底筋膜炎の痛み/障害のスケールを用いて疼痛の程度を評価しています。治療期間は4-8週間で、治療前と治療後とで比較しています。この中の1つの論文が治療後6ヶ月まで行い、治療前と比較しております。

結論①

治療前と治療8週間後で比較すると足底の疼痛が有意に減少しました*3。しかし、治療後6ヶ月になると、一般の治療との有意な差はみられませんでした。このことから、短期間における疼痛の軽減はできるものの、長期的なスパンで見るとそこまで強いエビデンスは今のところみられないということになります。

研究デザイン②

この研究では、足底筋膜炎による慢性のかかとの痛みに対するドライニードリングの影響を調べました。

20人の患者がランダムに2つ(コントロール群と治療群)のグループに分けられ、患者の足底痛の重症度(ビジュアルアナログスケール(VAS)変法を使用)、足関節背屈ROM[ROMDF]および足関節底屈ROM[ROMPE]および足部機能指数(SEM5およびMDC7質問表を使用)を治療前、介入後4週間、治療終了後4週間で測定しました

結論②

4週間の介入後、治療群の平均VASスコアはコントロール群よりも有意に低かった(p <0.001)ですが、ROMDFとROMPEの比較では、4週間の介入後、両群に有意な変化は見られませんでした(p=0.7 vs p=0.65)。4週間の介入後、治療群のMDC7およびSEM5スコアの平均は、コントロール群よりも有意に低かった(p <0.001)。よって、足関節の可動域には影響はみられませんでしたが、踵の痛みの重症度の改善がみられました*4

まとめ

上記の論文をまとめると、足底筋膜において、鍼灸治療によって疼痛が改善されるという報告はありますが、長期的な期間での効果は不明瞭であると考えられます。

推奨される治療方法

2017年に足底筋膜炎に対する診断と治療についてまとめられたシステマティックレビューが発表されました*5。その中でも下記に推奨される治療の一覧があります。

f:id:dogknt:20200329054355j:plain
その中でもトレーナー・鍼灸師がアプローチできる方法は超音波、マッサージ、徒手療法、マニピュレーション、ストレッチ、テーピングなどが挙げられています。 ただし、この論文においても治療に関してはまだ追加研究が必要と述べております。また、上記にあるように、足底筋膜の組織自体はこれらのアプローチによって大きく変化することは考えにくいです。そのため、現段階ではエビデンスレベルの強い治療方法は確立されていないと言えます。

個人的な意見になりますが、足底筋膜の解剖学的な変化は少ないということ、鍼灸の効果は従来の治療方法と比べて短期間でしか見られなかったことを踏まえると、状況によっては対処療法のような感じで鍼灸徒手療法を行うのはありですが、時間と状況に余裕があるのであれば、走り方といった動作から改善していく必要があるのかもしれません。ただし、足底筋膜炎の要因も複雑で人によって大きく違うので、鍼灸などの治療で疼痛を改善してみて様子をみるというのも場合によってはあるのではないかとも思っています。

 

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

参考文献

*1:Riel H, Cotchett M,Delahunt et al: Is ‘plantar heel pain’ a more appropriate term than ‘plantar fasciitis’? Time to move on. J sports Med. 2017;51(22):1576-1577

*2:Chaudhry H Schleip et al: Three-dimesional mathematical model for deformation of human fasciae in manual therapy J Am Osteopath Assoc.2008;108:379-390.

*3:Dr Anandan Gerard Thiagarajah, Clinic Director, Queenstown Polyclinic et al; How effective is acupuncture for reducing pain due to plantar fasciitis?; Med J. 2017 Feb; 58(2): 92–97.

*4:Bina Eftekharsadat, Arash Babaei-Ghazani, Vahideh Zeinolabedinzadeh; Dry needling in patients with chronic heel pain due to plantar fasciitis: A single-blinded randomized clinical trial;Med J Islam Repub Iran. 2016; 30: 401.

*5:Federica Petraglia,Ileana Ramazzina, Cosimo Costantino; Plantar fasciitis in athletes: diagnostic and treatment strategies. A systematic review Muscles Ligaments Tendons J. 2017 Jan-Mar; 7(1): 107–118.

Yergasons Test(ヤーガソンテスト)-スピードテストとの比較と感度・特異度-

f:id:dogknt:20200327063748j:plain

Yergasons Test(ヤーガソンテスト)とはヤーガソンテストは、スピードテストと並び、肩関節のスペシャルテストになります。肩関節のスペシャルテストは数多くあり、まずは問診等で絞っていき、どのスペシャルテストを用いるべきなのかを判断すると思います。そしてよく用いられているこれらの2つのテストはよく比較されているので、感度・特異度を中心にエビデンスの観点からお伝えしていきたいと思います。

 

Yergasons Test(ヤーガソンテスト)とは?

ヤーガソンテストとは肩関節のスペシャルテストであり、その中でも上腕二頭筋腱炎の可能性を評価します。スピードテスト上腕二頭筋腱炎だけでなく上方関節唇損傷を評価します(ヤーガソンも関節唇損傷によって陽性になる場合もあります)。上腕二頭筋の解剖ですが、上腕二頭筋短頭は烏口突起に付着するのに対し、上腕二頭筋長頭は結節間溝(intertubucular sulcus/bicipital groove)を通り、SLAP(Superior Labrum Anterior and Posterior)に付着します。そのため上腕二頭筋腱炎とは、上腕二頭筋の長頭の腱が炎症もしくは損傷する障害であり、主に結節間溝に疼痛が現れます。これらのテストでは、この上腕二頭筋長頭に負荷をかけることで、疼痛を再現するテストになります。また、SLAPに上腕二頭筋腱が停止するので、SLAP損傷している場合、上腕二頭筋長頭に負荷をかけることでSLAPの部分の疼痛を訴える可能性もあります。

 

方法

やり方

f:id:dogknt:20200327073541p:plain

患者は座位もしくは立位になり、検側の肘関節90°屈曲、前腕回内回外中間位の姿勢をとります(開始肢位)。その姿勢から検者が徒手にて前腕回内方向に抵抗をかけ、患者は回外方向に力を入れます。上腕二頭筋の作用の1つとして前腕回外があるので、この方向に抵抗をかけることで上腕二頭筋に負荷をかけます。

スピードテストでは、同じく座位または立位の姿勢から検側の肩関節屈曲90°、肩関節外旋、前腕回外位を開始姿勢とし、検者は徒手にて腕を垂直方向に押し、患者はその姿勢を耐えるようにします。このテストでは上腕二頭筋のもう1つの作用である肩関節屈曲に負荷をかけることで筋に負荷をかけます。

 

陽性基準

ヤーガソンテスト、スピードテスト共に上腕二頭筋腱の部分(結節間溝)に疼痛を感じたら陽性です。

 

エビデンス

現段階の見解

下記の通り、ヤーガソンテストは感度が低く、LR−もそこまで低くないので、このテストで陰性だからと言って上腕二頭筋腱炎の可能性を排除(rule out)できる可能性は低くなります。また、特異度もそこまで高くなく、LR+も高くないので、ヤーガソンテスト単独での陽性で上腕二頭筋腱炎を確定(rule in)するのは安易であると言えます。スピードテストの感度・特異度も似たような数値で、ヤーガソンテストと同様にスピードテストのみで判断するのはエビデンスの観点では良い方法とは言えません。2つのテストを比較しても感度・特異度の観点ではそこまで大きな違いはないので、どちらが有効なテストかというよりも、両方のテストに加え、Biceps load Ⅱ test(上腕二頭筋負荷テスト)などのスペシャルテストを加えたり、その他の症状などを総合的に判断していく必要がありそうです。

ここにヤーガソンテストの記事を出しておきながらいうのも何ですが、近年はBiceps Load Ⅱ Testの有効性が報告(感度:89%、特異度:論文によって差が大きく、正確な値は不明)されており、個人的にもBiceps Load Ⅱ Testをまず第1候補として扱っています。

方法としては、背臥位となり、検側の肩関節90°外転・外旋をし、その状態から肘関節屈曲をさせ、徒手にて抵抗をかけます。

感度・特異度

ヤーガソンテスト

感度:43%

特異度:79%

LR+:2.05

LR−:0.72*1

スピードテスト

感度:32%

特異度:75%

LR+:1.28

LR−:0.98*2

感度・特異度に関してはこちら

dog.training-univ.com

ツイッターもやってるのでぜひ交流しましょう!

参考文献

*1:Holtby, R., Razmjou, H. (2004). Accuracy of the Speed's and Yergason's test in detecting bicpes pathology and SLAP lesions: comparison with arthroscopic findings. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, 20(3), 231-236

*2:Holtby, R., Razmjou, H. (2004). Accuracy of the Speed's and Yergason's test in detecting bicpes pathology and SLAP lesions: comparison with arthroscopic findings. Arthroscopy: The Journal of Arthroscopic and Related Surgery, 20(3), 231-236

Ottawa Ankle Rules(オタワ足関節ルール) -陽性基準とエビデンス・感度・特異度-

f:id:dogknt:20200326182229j:plain

近年スポーツ現場でよく用いられているOttawa Ankle Rules(オタワ足関節ルール)。使い方がわかっている人は多いですが、実際のエビデンスをしっかり理解している人は少ないのではないでしょうか。そこで今回はオタワ足関節ルールの判断基準とエビデンスをお伝えしていきたいと思います。

 

 

Ottawa Ankle Rules(オタワ足関節ルール)とは?

オタワ足関節ルールとは足関節を受傷し、骨折の疑いがあった時に行うスクリーニング検査で、レントゲン撮影が必要かどうかを判断する時に用います。

実際問題、全ての患者さんのレントゲンを撮るのは時間的にも経済的にも実用的ではないため、迅速かつ正確にでき、不要な画像撮影を回避するために開発されました。

実際に以前、医師はすべての足首の怪我についてX線写真を注文していましたが、臨床的に重大な骨折があるのは15%未満であり、医療費が増加したという報告があります*1。特に欧米の一部の国では画像撮影にかかる費用も高く、念のために病院に行って画像を撮るということが頻繁にできない環境であるため、このテストは重要視されています。また、PTの開業権が認められている国では、捻挫などで来院した患者さんのスクリーニングでも用いるので、スポーツ現場だけとは限りません。

 

方法

やり方

f:id:dogknt:20200326193209p:plain 

http://www.ohri.ca/emerg/cdr/docs/cdr_ankle_poster.pdfより引用

オタワ足関節ルールは以下の5項目(上図を参照)によって構成されています。

  1. 脛骨後面で、内果から6cmまでの部位での圧痛
  2. 腓骨後面で、外果から6cmまでの部位での圧痛
  3. 第5中足骨底の圧痛
  4. 舟状骨の圧痛
  5. 受傷直後荷重して4歩以上歩けるか

陽性基準

陽性基準ですが、上記の5項目のうちどれか1つも当てはまる場合、陽性となります。

元々のオリジナルの方法としては足関節(距腿関節)と足部に分けて考えます。

足関節に関しては、果部の部分の疼痛、上記の1,2,5番のどれか1つでも当てはまれば陽性、足関節のレントゲン撮影を行う必要があり、足部に関しては、足部中央部(上記の図参照)の疼痛、上記の3-5番のどれかに当てはまれば陽性、足部のレントゲン撮影を行う必要があります。

ただし、このテストが開発された国ではPTがレントゲン撮影を行うため、それを見越してのテストとなります。そのため、PTがレントゲン撮影をしない国では、5項目まとめて考えるのが現実的だと思います。つまり、日本で実際に用いる場合、最初に説明したように5項目のうち1つでも当てはまれば陽性なので、病院に送り画像撮影をお願いするという流れが1番実用的な流れかと思います。

 

エビデンス

感度・特異度

最も重要なエビデンスについてですが、下記のように特異度が低いので、陽性だからと言って骨折の可能性が高い訳ではありません。反対に感度が高く、LR−が低いので、陰性になった時の骨折の確率が極めて低いので、無駄なレントゲン撮影を省くことができるというのがこのテストの最大の特徴です、なので、このテストは骨折かどうかを判断するというより、明らかに骨折していない人を抽出して必要以上に病院に送る(画像撮影)手間を省くために用いられることが多いです。

このテストのデータ数は若年者の方が少ないですが、多くの論文では基本的に若年者(6歳以上)にも用いるように推奨されています*2

感度:96.4-99.6%

特異度:26.3-47.9%

LR−:0.08*3

感度・特異度に関してはこちら

dog.training-univ.com

推奨基準

推奨レベルではありますが、以下の3つの条件下・方法ではオタワ足関節ルールの正確性が増すという報告があります*4

後方だけでなく脛骨・腓骨全体圧痛を確認する(下から6cmは同じ)

内果の圧痛の有無

患者は18歳以上

 

ツイッターもしているので、是非交流しましょう!

参考文献

*1:Brooks SC, Potter BT, Rainey JB. Inversion injuries of the ankle: clinical assessment and radiographic review. BMJ 1981; 282: 607-608

*2:Dowling S, Spooner CH, Liang Y, et al. (April 2009). "Accuracy of Ottawa Ankle Rules to exclude fractures of the ankle and midfoot in children: a meta-analysis". Acad Emerg Med. 16 (4): 277–87

*3:Bachmann LM, Kolb E, Koller MT, Steurer J, ter Riet G. Accuracy of Ottawa ankle rules to exclude fractures of the ankle and mid-foot: Systematic review. BMJ 2003;326:417-23

*4:Stiell IG, McKnight RD, Greenberg GH, McDowell I, Nair RC, Wells GA, Johns C, Worthington JR. Implementation of the Ottawa Ankle Rules. JAMA 1994;271:827-32

Spurling's Test(スパーリングテスト) -ジャクソンテストとの比較・陽性基準・感度・特異度-

f:id:dogknt:20200325205118j:plain

Spurling's Test(スパーリングテスト)は頚椎のテストです。頚椎のテストは他のテストと併用して用いられることが多いので、今回はスパーリングテストに絞って陽性基準・感度・特異度を中心にお伝えしていきたいと思います。

 

 

Spurling's Test(スパーリングテスト)とは?

スパーリングテストは頚椎の神経根障害(Cervical Radiculopathy)の有無を評価するものです(Myelopathyと混合しないように)。スパーリングテストでは検者が頚椎の神経根の部分に負荷をかけ、症状の再現を確認することで評価するテストです。ジャクソンテストなど神経根障害のテストは他にもあるので、混合しないようにする必要があります。

 

 

方法

やり方

f:id:dogknt:20200326024413p:plain

患者は座位の姿勢をとり、検者は患者の体を支えるため健側の肩に手を置きます(置かない方法もあります)。患者は自動にて頚椎を伸展、患側(検側)に側屈します。この状態から検者は患者の頭頂部にもう一方の手を置き、垂直に圧を加えます。ちなみにジャクソンテストは側屈や回旋を加えずに頚椎を伸展した状態で頭頂部より圧迫を加える方法です。

※別法として頚椎の健側への回旋を加えて行う方法もあります。 

注意点

頭部への圧迫ですが、頭部の重さ(7kg前後)以上に圧迫を加えるのは危険です。また、負荷も徐々に加えていくようにしましょう。このテストは症状の悪化も引き起こしかねないテストなので、注意が必要です。

 

陽性基準

検者が圧迫を加えた時、患者が痺れや頸部から抹消にかけての疼痛といった症状の再現が起きれば陽性。頚椎の神経根障害が疑われます。

 

 

エビデンス

ジャクソンテストは論文数が少なく、海外では頚椎の神経根障害のテストではあまり名が上がりません。一方スパーリングテストは、論文数も多く、データもたくさんあります。ただし、下記のように、特異度は十分高いのですが感度が低いため、頚椎の神経根障害を除外(rule out)することが、スパーリングテスト単独では難しくなります。そのため、近年ではRobert Wainner医師が提唱している4つのテスト(スパーリングテスト、ULTT、牽引テスト、頚椎回旋テスト)を併用する方法が主流になってきています。この4つのテスト全てが陽性であれば、神経根障害の可能性が90%、3つ陽性であれば65%という報告*1もあります。

※ULTT:同じく頚椎の神経根障害の評価テストで、抹消での神経の滑走などを評価する

牽引テスト:神経根の圧迫を取り除き、症状が改善されるかを評価するテスト

頚椎回旋テスト:C1-2間の回旋可動域と疼痛を確認するテスト

 

感度:50%

特異度:85-88%

LR+:3.5

LR−:0.58

kappa:0.60*2

感度・特異度に関してはこちら

dog.training-univ.com

ツイッターもやってるので、ぜひ交流しましょう!

参考文献

*1:Wainner RS, Fritz JM, Irrgang JJ, Boninger ML, Delitto A, Allison S. Reliability and diagnostic accuracy of the clinical examination and patient self-report measures for cervical radiculopathy. Spine 2003; 28(1):52-62

*2:Flynn TW, Cleland JA, Whitman JM. Users' Guide to the Musculoskeletal Examination. Buckner: Evidence in Motion; 2008.

McMurrays Test(マックマレーテスト)-陽性基準と感度・特異度-

f:id:dogknt:20200325175403j:plain

McMurrays Testは半月板のスペシャルテストで最も信頼性が高いテストだと言われています。

そこで、具体的な陽性基準と感度・特異度について詳しくお伝えしていきたいと思います。

 

 

McMurrrays Test(マックマレーテスト)とは?

マックマレーテストとは半月板損傷の有無を評価するテストとして用いられます。若年層においては膝の半月板は通常膝をひねることによって、外的に引き裂かれます。外傷性タイプの半月板損傷は、ほとんどの場合スポーツ現場で生じます。半月板は前方から後方、放射状に裂けるか、バケットハンドル状に変形します。高齢者では、加齢に伴う半月板の自然な変性や関節炎による大腿骨骨表面の裂傷などが原因である可能性があります。 この場合、半月板の修復と損傷した関節面の修復の両方が必要なため手術が行われることがあります。半月板の裂傷の種類によっては、半月板の修復が複雑になる場合があります。 また、治療が不十分な大きな半月板の裂傷は、早期の変性骨(関節炎)の変化を引き起こす可能性があります。このテストでは膝関節を他動にて色々動かして半月板に負荷をかけるテストなので、検者の技術が必要になってきます。そこで、今回はそのやり方と、その陽性基準を中心にお伝えしていきたいと思います。

 

 

方法

やり方

f:id:dogknt:20200325191902p:plain

患者は背臥位で、検者は頭側の手で膝を把持します。この時親指は外側の裂隙を、他の4本の指で内側の裂隙を触れるような感じで把持する。尾側の手で足底を把持します。膝関節最大屈曲の位置から、他動にて脛骨の内旋と内反ストレスをかけながら膝を伸ばし、また最大屈曲位に戻します。同じように膝関節最大屈曲位から脛骨の外旋と外反ストレスをかけながら膝を伸ばし、再び屈曲位に戻します。これらの評価の際、圧迫をかけながら行った場合と牽引をしながら行った場合とを比較します。脛骨のIRに続いて伸展すると、半月板の後部から中央部分まで評価できます。 半月板への圧力をかけることが難しいため、前部の評価は容易ではありません。

個人的な意見ですが、解剖学的に考えて半月板は圧迫と膝関節の動きによって負荷がかかるので、上記のような方法だけでなく、内外旋を同じ角度で行って見たり、色々な動きを加えて疼痛をチェックするのもありかと思います。と言うのも半月板損傷しているのにうまく半月板に負荷をかけられず、偽陰性になることも多いので。(偽陰性については感度・特異度の記事へ)

 

陽性基準

上記のように動かしている中で、痛み、カチッという音、またはロックするようなことが見られれば陽性で、半月板の損傷を示している可能性があります。また、圧迫した方法で疼痛が見られ、牽引しながら行ってその疼痛が軽減されれば、より陽性の可能性が高くなります。脛骨の回旋の向きによって下記のように負荷のかかる場所が変わります。

内旋・内反:外側半月板 ※外側半月板の評価として内旋・外反と言う人もいます

外旋・外反:内側半月板 ※内側半月板の評価として外旋・内反と言う人もいます

 

 

エビデンス

特異性と感度の研究では、方法論の質が低いためにさまざまな値が示されています。マックマレーテストは半月板のスペシャルテストの中で最も信頼性が高いと言われていますが、感度、特異度共に下記のようにそこまで高くないので、現在の知見ではマックマレーテストのみで判断することは少なく、アプレー圧迫テストなどと併用していくことが良いとされています。ちなみアプレーテストの正確性(accuracy)は60-70%*1と言われています。また、関節裂隙の圧痛の確認なども半月板の評価として大切だとも言われています。

感度:70%

特異度:71%*2

感度・特異度についてはこちら

dog.training-univ.com

ツイッターもやっているので、ぜひ交流しましょう!

 

ラックマンテストについてはこちら 

dog.training-univ.com

参考文献

*1:Hegedus EJ, Cook C, Hasselblad V, Goode A, McCrory DC. Physical examination tests for assessing a torn meniscus in the knee: a systematic review with meta-analysis. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy, 2007; 37(9), 541-50.

*2:Hegedus EJ, Cook C, Hasselblad V, Goode A, McCrory DC. (2007)Physical examination tests for assessing a torn meniscus in the knee: a systematic review with meta-analysis. Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy, 37(9), 541-50

感度・特異度とは -陽性・尤度比について-

 f:id:dogknt:20200324223948p:plain

皆さんは感度と特異度を知っていますか?

スペシャルテスト(整形外科テスト)を行うときに必ずと言って良いほど出てきますよね!

でも感度と特異度を勘違いしている人が多いのも事実です。感度や特異度が高いということはどういうことでしょうか?そこで今回は感度と特異度についてお伝えできればと思います。

 

 

感度・特異度とは?

感度と特異度は統計学でよく用いられる統計的尺度のことであり、医学などによく用いられます。私たちの業界で話をするのであれば、スペシャルテスト(整形外科テスト)が主な例として挙げられます。

 

求め方

言葉の定義

真陽性(TP:True Positive):実際に陽性であり、テストの結果も陽性

真陰性(TN:True Negative):実際に陰性であり、テストの結果も陰性

偽陽性(FP:False Positive):実際は陰性であるが、テストの結果は陽性

偽陰性(FN:False Negative):実際は陽性であるが、テストの結果は陰性

 

計算方法

それでは感度と特異度とはどのように計算されるのでしょうか。

わかりやすいように、足関節の靭帯損傷のテストということで説明していきます。

まず、感度・特異度とは下記のように計算されます。

感度:実際に靭帯を損傷した人の中で、テストで陽性になった人の割合

特異度:実際には靭帯を損傷していない人の中で、テストで陰性になった人の割合

 

f:id:dogknt:20200325005458j:plain
感度のことを真陽性率、特異度のことを真陰性率という人もいますが意味は同じです。

 

スペシャルテストにおける感度・特異度の意義

感度と特異度の計算方法は上記の通りに計算しますが、それでは実際の臨床やスポーツ現場で行われるスペシャルテストの感度・特異度が高い、低いということはどのように意味なのでしょうか。

感度

まず感度について見ていきましょう。引き続き足関節の靭帯損傷の例で行くと、感度は靭帯損傷した全員の中でテストが陽性になる確率です。この確率が高いということは、偽陰性(上の式でいうFN)の確率が低いということです。言い換えると、靭帯損傷はしているのにテストでは陰性だったという人が少ないという意味になります。例えば、テストで陰性だった、となれば、靭帯が切れていなくて陰性(真陰性)なのか、靭帯が切れていても陰性(偽陰性)なのかわかりません。そこで、感度が高い=偽陰性の確率が低い=そのテストでの陰性はほとんど真陰性と考えて良いということになります。つまり、感度が高いテストというのは、陰性であればその対象の疾患を除外(rule out)できる可能性が高いということになります。

 

特異度

続いて特異度についてです。特異度は靭帯損傷をしていない人を全員テストし、陰性になった確率です。この確率が高いということは、偽陽性(上の式でいうFP)の確率が低いということです。言い換えると、靭帯損傷はしていないのにテストでは陽性だったという人が少ないという意味になります。例えば、テストで陽性だった、となれば、靭帯が切れていて陽性(真陽性)なのか、切れていなくても陽性(偽陽性)なのかわかりません。そこで特異度が高い=偽陽性の確率が低い=そのテストでの陽性はほとんど真陽性と考えて良いということになります。つまり、特異度が高いテストというのは、陽性であればその対象の疾患が示唆される(rule in)可能性が高いということになります。

 

わかりやすく極端な言い方をすると、感度(特異度)が高いテストはなかなか陰性(陽性)になりにくく、それでも陰性(陽性)になるってことは実際に陰性(陽性)だよねっといった感じです

 

Likelihood Ratio(尤度比:ゆうどひ) 

尤度比とは

感度や特異度の他にLikelihood Ratio(LR)というものがあり、感度や特異度の追加情報のような位置付けで用いられることがあります。LRには+と−があり、

LR+=感度/1-特異度=真陽性率/1-真陰性率=真陽性率/偽陽性

LR−=1-感度/特異度=1-真陽性率/真陰性率=偽陰性率/真陰性率

で表されます。

細かい話はここではしませんが、LR+は高ければ高いほどテストが陽性であれば実際に陽性である確率が高いということ、そしてLR−は低ければ低いほどテストが陰性であれば実際に陰性である確率が高いということを意味します(下記の分類を参照)。

 

LR+/LR−の分類

>10.0/<0.1 :陽性/陰性の確率が高い

5.0-10.0/0.1-0.2:陽性/陰性の確率が中程度

2.0-5.0/0.2-0.5:陽性/陰性の確率が低い

1.0-2.0/0.5-1.0:陽性/陰性の確率がかなり低い*1

実際の臨床ではこちらの方が使いやすいのかもしれません。

海外のスペシャルテストや評価の本などには感度と特異度だけでなく、尤度比も記載されているものが多い印象です。

これらの単語は感度・特異度と意味合いが似ているので、混在しないようにしましょう。

 

ツイッターもやってるのでぜひ交流しましょう! 

参考文献

*1:Jaeschke, R., Guyatt, J.R., Sackett, D.L. (1994). Users guide to the medical literature. III. How to use an article about a diagnostic test. B. What are the results and will they help me in caring for my patients? JAMA, 27: 703-707.

Lachman Test(ラックマンテスト)-やり方・陽性基準・前方引き出しテストとの違い・感度・特異度-

f:id:dogknt:20200324213952p:plain




Lachman test(ラックマンテスト)はスペシャルテスト (整形外科テスト)として最も知られているテストの一つです。また、前方引き出しテストともよく比較され、何がどう違うのか、混乱している方も多いと思います。そこで今回は、ラックマンテストのやり方・陽性基準を中心に、説明していきたいと思います。

 

Lachman Test(ラックマンテスト)とは?

Lachman Test(ラックマンテスト)は、膝関節(脛骨大腿関節)の他動での副運動(Accessory movement)のテストで、前十字靭帯(ACL)損傷の有無を評価するために行われます。ACLは大腿骨に対して脛骨の前方移動を制限する靭帯です。そのため、この靭帯が損傷すると、脛骨の前方移動量が増加し、膝関節の不安定性を高めてしまいます。このテストはそのACLのテストのため、矢状面(前方向)における不安定性の評価に用いられます。

 

方法

f:id:dogknt:20200324091314p:plain

やり方

患者は背臥位になり、患者の膝を約20〜30度屈曲させます。検者は尾側の手で脛骨を把持し、頭側の手で患者の大腿を把持します。尾側の手の親指が患者の脛骨結節に位置するのが目安です。Bates' Guide to Physical Examinationによると、この時に下腿(脛骨)の外旋を少し加える方が良いとしています。その位置から脛骨を前方にスライドさせ、脛骨の移動量とエンドフィール(エンドポイント)を確認します。

ただ実際の臨床、特にスポーツ現場では、選手がリラックスできないことも多く、テストが正しく行えないことが多いです。 

陽性基準

脛骨を前方に引っ張ると、健常なACLの場合、大腿骨に対する脛骨の前方への並進運動を靭帯が制御し、エンドフィールはfirmになりますエンドフィールがsoftで脛骨の前方移動がみられた場合、陽性なります。健側の膝と比較して約2mm以上の前方移動はACLの損傷を示唆します。KT-1000と呼ばれる機器を使用して、ミリメートル単位で動きの大きさを測定もできます。

陽性の有無だけでなく、グレードによる分類も存在します。

グレードI:脛骨の前方移動:<5mm

グレードⅡ:脛骨の前方移動:5-10mm

グレードⅢ:脛骨の前方移動:>10mm

 
注意点

PCLも同時損傷している場合は、膝関節を屈曲した時に脛骨が重力によって背側方向に落ち込むため、そこから脛骨を前方に動かすと、脛骨の前後方向の移動量が増加してしまうため、誤診をしてしまう可能性が高くなってしまいます。そのためPosterior Sag Sign testなども併用して行うと良いです。

 

エビデンス 

前方引き出しテストとの違い

前方引き出しテストとの違いですが、一般的には下記にあるように感度は前方引き出しテストの方が高く、特異度はラックマンテストの方が高いという結果になっております。つまり、ラックマンテストの方が、陽性だった時実際にACLが損傷している確率が高く、前方引き出しテストの方が、陰性だった時にACLが損傷していない確率が高いということになります。ただ、麻酔科ではラックマンテストの感度は97.3%にまで上がるという報告もあります。また、実際の臨床では男女差を示唆する論文もあり、前方引き出しテストでは男性の方が感度が高く(男性:95%/女性:72.7%)、ラックマンテストでは女性の方が感度が高い(男性:66.7%/女性:94.6%)という結果になっています。

これらを踏まえると、感度・特異度の差や男女差もありますが、両方を用いてより信頼性を高める方が良さそうです。

感度・特異度

ラックマンテスト

感度:77-88%

特異度:98%

 

前方引き出しテスト

感度:92-94.4%

特異度:91%

 

感度・特異度についてはこちら

dog.training-univ.com

参考文献

Katz JW, Fingeroth RJ. :The diagnostic accuracy of ruptures of the anterior cruciate ligament comparing the Lachman test, the anterior drawer sign, and the pivot shift test in acute and chronic knee injuries. The American Journal of Sports Medicine 1986;14:88-91.

Hadi Makhmalbaf, Ali Moradi, Saeid Ganji, Farzad Omidi-Kashani: Accuracy of Lachman and Anterior Drawer Tests for Anterior Cruciate Ligament Injuries. Arch Bone Jt Surg. 2013 Dec; 1(2): 94–97.

 

マックマレーテストについてはこちら 

dog.training-univ.com

ツイッターもやってるのでぜひ交流しましょう!